田原総一朗×神戸市長が語る「神戸市の逆襲」 人口減少はくい止められるのか!?

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久元 ゼロからビジネスをスタートさせる土壌がなければ都市は発展しません。スタートアップ支援は多くの自治体で取り組まれていますが、神戸の特徴は、海外に開かれていることです。米国・シリコンバレーに本社を置く世界で最もアクティブなアクセラレーター、500 Startupsがわが国で初めてのプログラムを神戸で展開し始めて4年になりますが、今では、応募者の6割が海外からの若者たちです。国内にとどまらず世界中から若い頭脳を神戸に呼び込み、神戸を起点に世界に羽ばたいてほしい。

震災後、新たにスタートさせた「神戸医療産業都市」もわが国で最大級のバイオメディカルクラスターに成長し、さらなる飛躍に向けてノーベル医学・生理学賞を受賞した本庶佑先生に神戸医療産業都市推進機構の理事長として、牽引していただいています。ヘルスケア分野でのベンチャーも続々と生まれており、次世代産業へと成長していくことでしょう。

田原 本当なら神戸はシリコンバレーみたいな街になってもいいはずです。しかし日本の大企業の研究所はほとんどシリコンバレーにあり、日本はイノベーションできない、チャレンジできない国だと言われています。この日本の大問題。神戸ならどうしますか?

久元 田原さんは六甲山をご存じだと思いますが、山上からは美しい夜景を楽しむことができます。この六甲山上でいま考えているのが「六甲山上スマートシティ構想」です。さまざまなテクノロジーを使った実験を行うとともに、スタートアップやベンチャー企業の皆さんがオフィスや拠点を構え、眼下の風景を眺めながら、自然の中でビジネスを展開できるようにする構想です。シリコンバレーとはまた違う雰囲気の創造的な知的拠点として具体化していきたいと考えています。

田原 なるほど、さらに挑戦していることはありますか?

久元 「人間にやさしいまちづくり」という観点から、認知症になっても安心して暮らせるまちを目指し、全国初の認知症「神戸モデル」をつくりました。これは認知症の検診(第1段階)、精密検査(第2段階)がすべて無料で受けられ、その後のケアに結びつけるほか、認知症の方が起こした第三者への損害について神戸市が一括して保険に加入して見舞金の支給や損害賠償を行うものです。その財源として、個人市民税を一律に400円引き上げる増税を行いました。市民の理解に感謝しています。

現役世代が減少していく中で、自治体がバラマキをやっているようでは駄目です。子どもの医療費を完全無料化するとか、給食を無償化するとか言って人口を呼び寄せようとする自治体もありますが、赤字地方債を発行して財源をやりくりしている現状では、今の子どもたちに将来負担を負わせるだけです。持続可能な都市経営のためには、受益と負担のバランスを考えるべきです。

今後も、人口減少を食い止めるため、テクノロジーを生かした「人間サイズのまちづくり」という観点から、神戸で住みたい、学びたい、働きたい、という方々を増やすための施策を展開することで、神戸のまちの魅力を向上していきたいと考えています。

田原 日本で今大事なことはイノベーションを行うことです。世界の都市と競っていくためにも神戸からのイノベーションに大いに期待しています。