田原総一朗×神戸市長が語る「神戸市の逆襲」 人口減少はくい止められるのか!?
久元 巻き返しのために、高層タワーマンションを林立させて人口を増やすという対策は取りません。現在、タワマン、とくに分譲型のタワマンでは、修繕積立金の不足が目立っており、将来老朽化が進んでも大規模修繕ができないような事態になれば、大きな問題になります。
また、都心居住のニーズに応える必要はありますが過度に居住機能が都心に集中すると、商業やビジネス、にぎわいが失われます。神戸市では三宮周辺のマンション建設を禁止しました。三宮周辺には商業・業務機能を集積させ、再整備を進めます。神戸の都心を大阪のベッドタウンにはしません。都心への人口集中を避け、郊外を含めた拠点駅の駅前を上質なデザインにも配慮しながら整備し、民間投資の呼び込みを図ります。
神戸が目指すのは、海と山の恵み、そしてブランド力を生かした“人間サイズのやさしいまち”です。神戸は六甲山を擁し、その北側には豊かな里山が広がり、自然、文化遺産、かやぶき民家などが存在する大変魅力的な地域です。日本でいちばんかやぶき民家が多い自治体は、意外に思われるかもしれませんが、神戸です(※2)。
外国人観光客の間でも日本の自然や文化に関心が高まっている今、里山の自然と文化遺産が一体となったたたずまいを見せる神戸の田園地帯は、大きなブランド価値を持っていると言えます。農業体験などの一時的な訪問・交流から、農村地域への移住・定住を図る「神戸里山暮らし」というプロジェクトにも取り組んでいます。
田原 多くの自治体は改革をできないからやらないと言っている。それでは駄目です。できないことをやるからこそ革新になる。神戸市として取り組んでいることは何ですか。
久元 今年の6月1日から北神急行という路線の運賃を半額にします。これは普通ではできない革新的な取り組みだと思います。里山が広がる神戸の北部の玄関口である谷上駅~三宮駅間(8.8km)の運賃を550円からほぼ半額の280円に引き下げ、交通利便性を高めます。北神急行は、市営地下鉄と相互乗り入れをしていますが、神戸市交通局が北神急行を買収することで一体運行を実現し、半額化できることになりました。
今の時代、「官から民へ」が常識とされていますが、市民目線で不可能を可能にするためなら、「民から官へ」の挑戦をしても一向に構わないと思います。
田原 神戸といえば、かつてスーパーマーケットで天下を取った大手企業の創業者の出身地でもありますね。阪神・淡路大震災後も「ピンチこそがチャンスだ」と言い切っていましたが、彼のような経営者はこれからの神戸で育ちますか? もっと産業をつくらなきゃなりませんよ!
出典:(※2)平成27年度 神戸市教育委員会 茅葺民家建物調査結果