今求められる「自己を変革し続ける」経営者 社長の「知性」レベルが組織の将来を決める

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丸山 経営者自身が、その恐れを乗り越えて自己変革を進め成長し続ける姿勢を示すことが、経営チームや組織に変革を促す原動力となるのです。例えばある一部上場企業では、当初の評価では社長後継者の基準を満たす候補者がいませんでした。しかし潜在能力の大きな人材を発掘し、ITCを含めさまざまな自己変革支援を行った結果、現在は指名委員会から高く評価される社長にまで成長されました。

そして、その社長は、就任後、自らの自己変革の軌跡を開示し、手本となることで、経営チームや組織全体に変革を促したのです。数年にわたる取り組みの結果、その企業は、ITCという共通の自己変革の方法論を持ち、自身及び組織の固定観念を取り払い成長を続ける集団に進化しつつあります。

社長になってからこそが学び・成長のチャンス

――日本の経営者へのメッセージは?

キーガン 内部昇格でリーダーが選ばれることの多い日本企業では、社員の持つポテンシャルを最大限開花させることに大きなニーズがあります。それを実現するにあたり、ITCが日本企業に貢献できる余地は大きいと感じています。

丸山 我々もそう感じています。エゴンゼンダーが日本で企業統治改革や社長後継計画の策定の支援を始めたのは90年代半ばでした。日本企業の取締役会、指名委員会とともに四半世紀近く取り組みを重ねる中で、実はリーダー個人の価値観や姿勢、マインドの変革こそが、社長後継候補の準備、経営陣の強化に大きく関わっていることがわかってきました。

そんな中でキーガン教授にお会いできたのはまさに渡りに船の心境でした。ITCを用いることで、見事に「意識改革」「ポテンシャルの開花」が図られ、それまで期待に埋もれかけていた人材群の中からも、指名委員会から高い評価を受ける社長後継候補が次々と浮かび上がってくる結果となってきたのです。

実際に社長づくり、そして社長就任後の自己変革のお手伝いをして感じるのは、「社長になってからこそ、学びや成長の機会があふれている」ということです。まず、自分の明確な経営観、価値基準を持つこと、すなわち自己主導型知性を獲得することは極めて重要です。

しかし、自分の価値観の限界に気づかずに考えを押し通していくと、冬季の登山のように環境変化の激しい今の時代には視野狭窄となり思わぬ落とし穴にはまってしまう危険があります。それに対し、自分の軸を持ちつつも、自分の限界をも知り、謙虚に学び続ける姿勢を身に付けた自己変容型知性の社長は、苦境や修羅場をむしろ成長の機会と捉え、自己や組織のさらなる進化につなげることができます。今の日本企業に求められている社長とは、まさにこのような存在です。

冒頭に言及した弊社調査で、「自分が経験した社長後継プロセスをどう評価するか?」と問いかけたところ、よかったという回答は海外が6割を超えたのに対し、日本は3割どまりでした。今こそ、社長後継計画を形式論にとどめず、経営者候補の自己変革を加速する実質的な支援を行うことが必要であり、我々の果たすべきミッションと捉えています。

エゴンゼンダーとは
●スイス発祥の企業統治・経営人材コンサルティングファーム
●世界40カ国に68のオフィスを展開。2300人のプロフェッショナルスタッフを擁する
●1964年創業。日本では72年より活動。全コンサルタントがITCなど各種心理手法の資格を取得