シリーズAでつまずく経営者が抱える問題 危機に直面したときに必要な「自己変革」
秋好 合理的なサービスであればユーザーはついてくると思い、創業から3年目くらいで現在の姿になる想定でしたが、実際にはまったく使ってもらえませんでした。想定以上に社会の動きは遅かった。10年以上経って、ようやく想定した形になってきましたが、それでも自分のイメージに対して60%くらいのギャップはありますね。
山下 リノベーションビジネスを進める際、ユーザーの新築指向が大きな壁となりました。また、最近のテクノロジーの進化を考えると、もっと賢くやれたところもあったのではないかと思っています。
吉田 プロダクトについての知見はあったのですが、それまでのキャリアでは初めてのチャレンジだった広告ビジネスを始めて、すぐに広告売り上げをつくる難しさを思い知りました。やはり業界のことを深く理解していないと事業を伸ばす際に難しい部分がありますね。
ベンチャーは「既存業界」や「社内人事」とどう向き合うべきか
宮坂 そうした既存の業界のルールに対して、ディスラプト(破壊)なのか共存共栄なのか、シリーズA-Bのスタートアップにはどんな姿勢が求められるのでしょうか。
吉田 私は小売業界の皆様ともお仕事させていただいているのですが、既存の大手企業と共に新しい産業をつくっていこうというスタンスでご一緒しています。
山下 不動産業界でも、業界を革新するという“ディスラプト”は難しいように思います。不動産ビジネスのルールからはみ出そうとすると、どうしてもペナルティーを受けてしまう。そのため、ある意味では、長いものに巻かれながら、自分たちで大きなうねりをつくっていったほうがいいと考えています。ディスラプトは一見格好いいですが、結果として遠回りになってしまうような気がしますね。
宮坂 一方、事業が軌道に乗る段階においては、創業メンバーや社内人事について悩まれる方も多いですよね。
秋好 社員が100人を超えると、辞める人が出てくるのは新陳代謝として仕方ないのですが、経験豊富なベテラン社員を早い段階で採用しておけば、成長確度は変わっていたかもしれません。会社員の頃から年上の上司が苦手で、会社を始めてからも年下ばかりを採用していました。自分がもっと成長すべきだったと反省しています。
山下 シリーズA以降、優秀な人材を採用しやすくなりましたが、その一方で、創業メンバーの経営体制を変更するのが難しかったですね。いったん肩書を与えてしまうと、配置換えは本当に難しい。それで辞めてしまう人もいます。当初から肩書変更の可能性があるということを創業メンバーに伝えることは必要だと思いますね。
吉田 シリーズB以降にオフィスを引っ越したのですが、管理部門を固めるのが遅れたことから、移転に関わる業務もすべて、自分1人で対応してしまいました。管理部門は売り上げや利益と直接関係ないため、ついつい投資に二の足を踏んでしまいがちですが、成長していく段階では必ず必要になってきます。
宮坂 自分が社長として変わるきっかけや気づきはどこで得られると思いますか。