スマートシティは電力システム、成長戦略の要
2016年をめどに家庭部門の電力も自由化され、街の中で電力を上手に作り、使う「スマートシティ」が実現に向けて動き出す。「スマートシティは日本の成長戦略の要」と訴える東京工業大学先進エネルギー国際研究センター長の柏木孝夫・特命教授に、スマートシティの行方を尋ねた。
新たな電力ビジネスを創る
電力規制改革
―― 2014年を迎えた今、スマートシティをどう捉えるべきでしょうか。
柏木教授 2010年から14年までの5年計画で、横浜市、豊田市、けいはんな学研都市、北九州市の4カ所でスマートシティ/コミュニティの実証実験が行われていますが、実現への道筋はまだ見えにくいのが実情です。しかし、新たなエネルギー基本計画が閣議決定され、電力自由化、エネルギーシステム改革の道筋が定まれば、スマートシティも本格的に動き出すでしょう。
―― スマートシティは、日本にとってどんな意味があるのでしょう。
柏木 金融緩和から始まったアベノミクスを持続的な成長につなげるには、成長戦略が欠かせません。そこで政府がとれる最も効果的な施策は、規制改革に尽きると思います。特に、電力業界はこれまで堅固な規制に守られてきました。それは戦後経済成長を支えた電力の安定供給に貢献してきましたが、現代はICT技術による、きめ細かな電力制御が可能で、規制に頼る必要はありません。16年の家庭部門の電力自由化を機に16兆円規模の電力市場に新規参入者を取り込み、新たなビジネスモデルを構築することで、エネルギー産業は貴重な成長分野になるでしょう。なかでも、デマンド側を制御して新たな価値を生み出す、スマートシティ/ハウス事業は、エネルギー関連の成長戦略の要です。