楽天が示した社会課題解決の新しいスタイル 2期目に突入するRakuten Social Accelerator

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近年、SDGsをはじめとして、社会課題の解決という側面から企業の在り方が問われている。利潤を追求する姿勢と社会課題の解決とをひも付けた新規事業の創出に挑む大企業が増え、スタートアップ界隈における、ソーシャルアントレプレナー(社会起業家)の存在感も高まってきている。巷では数多くのアクセラレーションプログラムが立ち上がり、大企業とソーシャルアントレプレナーの協働の形に対する様々な模索がなされている。楽天は昨年から社員たちの自発的アクションによる新たな社会課題解決プログラム「Rakuten Social Accelerator」を開始した。「果たしてその内容と成果はいかなるものなのか?」「今後、どのような展開と可能性が見込まれるのか?」。第1期のプログラムに参加していたメンバーに話を聞いた。

「社会起業家×楽天」がもたらしたさまざまな化学反応

昨年7月、複数社員による発案をきっかけに立ち上がった「Rakuten Social Accelerator(以下、RSA)」。第1期においては、教育、地方創生、障がい者就職支援、途上国支援事業など、社会課題の解決に取り組む社会起業家6団体と、これら団体の活動に共鳴した楽天の有志社員約80名によるチームが半年間にわたって協働作業を行い、社会課題の解決の促進を共に目指した。そのうちの1つが、永岡氏が手掛ける「おてつたび」との取り組みだ。楽天の高橋氏と南部氏は、RSAの参加メンバーとして楽天での通常業務を継続しながら、永岡氏との協働を進めていったという。

株式会社おてつたび 代表取締役CEO
永岡里菜氏

永岡:私は前職で農林水産省とともに和食推進事業を立ち上げる仕事をしていたのですが、仕事を通じて日本各地を訪れる機会を得ました。その中で地域それぞれに固有の魅力があることを痛感したことから、「おてつたび」というサービスで起業することを決めました。

 有名な観光地の有無に関わらず日本各地には独自の文化や産業が息づき、それらに携わる人々自体にも魅力がある。この魅力を伝えるために、単なる「旅」のプロモーションではなく、「お手伝い」という参加意識との掛け合わせで価値を創出していくというのが「おてつたび」の根本理念。この「お手伝い×旅=おてつたび」という前例のないサービスを推進するべく、会社を辞めて取り組み始めた永岡氏は昨年、まさに株式会社設立の直前段階でRSAの存在を知り、応募を決めたのだという。

楽天株式会社 コマースカンパニー
グローバルEC事業
クロスボーダー・トレーディング事業部
ヴァイス・ジェネラルマネージャー
高橋宙生氏

高橋:RSAでは協働していただく団体について2つだけ必須の基本条件を設けています。1つは社会課題の解決を目指している団体であること、もう1つは事業としての実績を一定程度上げている団体であること。永岡さんの「おてつたび」はまだ法人としての登記前だったのですが、複数の地域ですでにPoC(実証実験)を実施して成果を上げていました。また、RSA参加を希望して手を挙げた団体さんは非常に多く、私はその書類選考段階から携わっていたのですが、個人的に「おてつたび」の書類から強い熱を感じて、早くから協働したいと考えていました。 書類選考をクリアした団体は、楽天の有志社員が集まる会場でピッチを行い、直後の投票で得票数の多かったところが正式にRSAのプログラムとして始動したのですが、このピッチでも永岡さんが放った熱量は非常に大きかったです。

楽天株式会社 メディア&スポーツカンパニー
マイクロタスクソリューション課
マネージャー
南部久美氏

南部:私もそのピッチを見て「おてつたび」との協働を決意しました。楽天は創業以来、人々と社会を「エンパワーメント」することを大切にしています。私がこの会社に入社することを決意した最大の理由もそこにありましたから、日々の仕事でも熱量の高い仲間と働いていたのですが、社会起業家団体の方々が発する熱にはやっぱり圧倒されました。従来の業務で得られるものとは別の何かがRSAで手に入るはず。そんなワクワクする感覚を得ることができました。

永岡:ありがとうございます。私としてみれば、楽天ブランドが持っている知名度や社会的信用、そしてITをはじめとする先進技術やビジネスを成功させるためのノウハウといったリソースによってバックアップが得られることに大きな魅力を感じて、RSAへ応募しました。実証実験も兼ねてクローズドで始めた「おてつたび」が上手くいき始め、ようやくこれから登記というフェーズでもあったので、壮大なビジョンと未来の当たり前のサービスにしたいという強い「熱量」、「想い」、「勢い」が中心の中、まっすぐその想いを皆さんに呼び掛けたのですが、高橋さんや南部さんをはじめ何人もの方が「おてつたび」の志に共鳴してくれました。結果として最大の収穫だったのは、こうした同志と協働できる半年間を得たことです。

RSAプログラムとして決定した各プロジェクトでは、まず、それぞれ明確な目標を立てる。「おてつたび」では、(1)PoCを重ねてサービスを整え、β版をローンチする、(2)ビジネスとして成立させるため、書式・ツールをそろえる、(3)説明会を展開してサービスに参加する登録者の数を増やしていく、(4)地方自治体との連携方法を模索する、という4つを完遂するべく、役割分担も行いながら始動したという。そして6ヵ月後に開催されたデモデイの会場で、全てにおいて明快に成果が上がったことを報告した。

永岡:短期的・季節的な人手不足で困っている地域事業者(宿泊事業者や農家など)と、「色々な地域へいきたい!」「都心で経験できない仕事や人に会いたい」と思う都心を中心とした若者をweb上でマッチングするのが「おてつたび」の基本モデル。お手伝いを通じて地域のファン(関係人口)づくりを行なっています。このビジネスモデルを会社組織としてきちんと機能させながら実行していける体制をつくっていく過程で、楽天の皆さんが持つ知見や経験、テクノロジーやノウハウが大いに役立ちました。サービスの顔であるサイトも刷新できましたし、説明会の開催にあたっても共に汗を流してくれました。各地の自治体や宿と協力関係を築いていく局面では、楽天さんの企業としての社会的信用が大きくものをいいました。岐阜県の飛騨市などは、もともと楽天さんとの包括連携協定(※)が存在していたことから、非常に積極的に私たちとのコラボレーションに取り組んでくださいましたし、青森県の鰺ヶ沢町などとも連携することができました。
※楽天は2016年11月に岐阜県飛騨市と包括連携協定を締結。協定の詳細はこちら

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