大黒屋「中古品買取だけじゃない」大望とは? 質屋だからこそできる、壮大な挑戦が始まる
今後見据える北米市場への進出
「持続的な成長を遂げるためには、巨大で、つねに動いているマーケットに出ていくことが必要です。ただ、これからはブランド品のリユースもEC化が確実に進んでいきます。したがって当社もリアルな店舗だけではなく、ネットでの買い取り・販売の拡充に注力していきます。そのうえでも、もう1つの巨大市場である北米への進出が数年のうちには視野に入ってくるでしょう」と、小川氏は力強く語る。
それにしても同社はなぜこのようにスピーディーなグローバル化ができるのであろうか。例えばCXBとの合弁会社は出資比率50%ずつの完全な対等条件であり、日本の中堅企業が中国の巨大企業グループと対等の合弁会社を設立したことは、国内外では驚きをもって迎えられた面もある。
そのようなことが可能になった理由を探るには、小川氏の経歴に触れぬわけにはいかない。
小川氏は大学卒業後、総合商社のトーメン(現・豊田通商)に入社。ニューヨークに駐在しているときにグローバルな金融ビジネスへの憧れを抱くようになり、コロンビア大学経営大学院に入ってMBAを取得。1987年に米ゴールドマン・サックス・アンド・カンパニーに転じて、LBO(レバレッジド・バイアウト)ファイナンスを担当し、金融やM&Aなどに関わる経験を積んだ。
そして94年には香港の事業投資会社ファー・イースト・コンソーシアム・インターナショナル・リミテッドの代表に抜擢され、華僑との人脈やネットワークを築きながらグローバルマーケットでM&Aや企業経営に携わった。そのうえで2005年ごろ日本に戻って上場企業の経営に携わり、その数年後に大黒屋を買収し現在に至っている。
グローバルナンバーワンへ必要なピースはそろった
この経歴で明らかなように小川氏はグローバルな舞台でチャレンジングな試みを次々と行い、投資するだけではなく事業会社の運営にも直接携わり、自らのスキル、発想、人脈などを徹底的に鍛え上げてきた。だからこそ大黒屋ホールディングスを短期間に飛躍させることができたのである。その小川氏が言う。
「商材、人材、IT、海外拠点、グローバルネットワーク、経験値など、今の当社にはグローバルでナンバーワンを目指すのに必要なピースがすべてそろいました。これからは質業の原点に戻って国内事業を強化するとともに、シルバー世代を支援する新しいビジネスにも挑戦していきます。それと同時にグローバルビジネスもさらに拡大させ、ブランド品リユース市場でのナンバーワン企業を目指します。これは決して大言壮語ではありません。私たちにはそれができる力とチャレンジングスピリットが十分あると確信しています」
金融業と小売業の両面を併せ持つ質屋という業態は、世界でも歴史が長い。そして意外なほど懐が深く、しかも多面的な可能性を持っている。質屋だからできるビジネス、そして顧客から信頼され、海外でも高く評価されている大黒屋ホールディングスだからこそできる新しいビジネスの今後の成り行きに注目したい。