5Gが後押し、ライブ配信アプリの可能性 今や利用者は「若い女性」だけではない
日本における「17 Live」の運営を担う17 Media Japan代表取締役である小野裕史氏はこう話す。
「従来の芸能業界のビジネスモデルでは、世の中にパフォーマンスという価値を提供しているアーティストの方々よりも、所属事務所やエージェントの方にその収益が行き渡っているケースが一般的でした。そのため、せっかく才能があって、世の中に高い価値を提供できる人でも、収益を得ることができずに、その道を諦めてしまうという方も少なくありませんでした。それではフェアでないですし、もっと誰もが活躍できる世界をつくりたかったのです」
有料の電子ギフト=“投げ銭”を贈る心理とは?
それにしても、視聴者が画面の中のライバーに有料の電子ギフト=投げ銭を贈るというのは、いったいどんな心境なのだろう。
「たとえるなら、歌舞伎などの『おひねり』にも近いかもしれません。観客がひいきの演者に小銭を投げる『おひねり』の文化は、数百年前から日本にあったと言われています。おそらく『おひねり』が飛び交う光景自体が、盛り上がりの一つの演出になっていたのでしょう。『17 Live』でも一緒に盛り上がりたい、応援したいという気持ちが、電子ギフトを贈る行為になるのだと思います」(小野氏)
こうした、ある種日本人に馴染み深かった「投げ銭」の演出が、デジタルによって再現されたことで、ファンとの関係が可視化されているのは、ライブ配信アプリならではといえる。スマホ一台で、いつでも、どこでも視聴者と双方向のコミュニケーションを取れる。自分の日常生活のささやかなことでも、すぐ共有できるし、その場で共感しあえるのはライブ配信のもう一つの面白いポイントだ。
プラットフォームだけではなく、「育てる」役割も
「17 Live」では、アプリ内イベントやオフラインの公開オーディションが頻繁に行われ、「スター」になる道がたくさん用意されている。例えば、著名なイベントへの出演やCMのイメージキャラクターなどがあり、常に活躍の場を提供している。まさに、同社の理念である 「Empower Artist,Entertain the world. ~才能を輝かせ、世界をワクワクさせる~」の精神を体現しているのだ。
また、この活躍をサポートするために、運営元が主体となってライバーを育てている。ライバーには担当マネージャーが付いてコミュニケーションをはかり、配信に関する研修や、無償の社内スクールを通し、ライバー自身とそのコンテンツを磨き上げていく。
「180名の社員(2019年10月現在)の約半数が、ライバーを見出して教育する『ライバープロデューサー』業務に就いています。ライバーを育てるという部分に、これほど大きなリソースを割く配信会社は、ほかにはないのではないでしょうか。創業者でアーティスト出身のジェフリー自身が、その才能をプロデューサーや周囲の関係者に育てられ、それによって芸能界でキャリアを積み上げたという経験を持っています。ジェフリーのその経験があったからこそ、アーティストをプロデュースし、才能を開花させることの重要性を理解していますし、当社がこだわっている最大のポイントの一つです。それがライバーに利益を還元し育てていくという、まさに当社の理念につながっているんです」(小野氏)
ライブ配信の到来により加速する“アマフェッショナル”という存在
先述したとおり、ライバーに直接的に報酬を支払う形態や、「17 Live」の外に活躍の場を広げていく活動、また研修や社内スクールだけでなく、マネージャー制を敷いている徹底したライバープロデュース。このようなライバーファーストな取り組みを経て、同社では、「アマフェッショナル」※3という考えにたどり着いた。それは、すでに確立された職種や業態でのプロや、それを目指しているセミプロとは異なり、自身の「やりたいこと」を突き詰めた結果、収入につながっていたり、ファンを獲得したりしている人のことを指している。確かに、SNSや動画プラットフォームなどが一般化されたことにより、旅人やゲーム実況、ウンチク情報の語りべなど、SNSの登場以前には職業として成り立たなかった「コト」においても、生計を立てる人は増加している。
※3 「アマフェッショナル」とは、「アマチュア」と「プロフェッショナル」という言葉を掛け合わせた造語。