ビジネスの場で「あえてデニムをはく男」の野望 期待を裏切ることで、「自由な思考」が生まれる

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

「デジタル技術の進展によって、建築家のアウトプットは必ずしも建築物である必要はないと考えています。現在はオフィスビルのエクステリアやランドスケープ、ゲームの3Dモデラーを応用した住宅設計といった建築の仕事以外にも、インスタレーションやプロダクトのプログラム構築、または未来ビジョンのコンサルティングなどさまざまなプロジェクトを手がけています」

そのように語る豊田氏は東京大学工学部建築学科を卒業後、安藤忠雄建築研究所で修業ののちに、コロンビア大学大学院に留学し、建築学部修士課程を修了。その後、ニューヨークの設計事務所SHoP Architects(New York)を経て、現在は東京・台北の両拠点に事務所を構え、パートナーと共に活動を続けている。そんな豊田氏が目指すものは、従来の建築の枠を超えた建築家だ。

建築家
豊田啓介氏
2007年より東京・台北にて建築デザイン事務所「noiz」、2017年より建築・都市・テクノロジー・ビジネスを横断するコンサルティングプラットフォーム「gluon」を共同主宰。コンピューテーショナルデザインを取り入れたデザインで活躍の幅を広げる

「コンピューテーショナルデザインはこれまでの伝統的な建築デザインに対し、進化するデジタル技術を駆使した領域横断的な手法となります。その意味で、私はみなさんがイメージする従来の建築家ではなく、ゲームデザイナーや映画監督、それに物理学者やビジネスパーソンが融合したようなより拡張的な建築家の在り方を模索しているのかもしれません」

デジタル技術によってITビジネスが従来のビジネスの概念から大きく飛躍して続々と革新的なビジネスモデルを生み出しているように、建築の世界でも、建築の伝統を乗り越え、新たな革新を起こしたいという思いを豊田氏は抱いているのだ。

新しい発想は、違う業界を知ることから生まれる

「建築デザイン自体の目新しさだけでなく、もっと広範囲に建築の可能性を考えてみたいのです。これまでの建築の世界ではある意味これをやれば間違いなくそこそこいいものになるという評価軸が固まってしまっているところがありますが、デジタル技術の進展によって、高次元になればなるほどルールや評価軸はそう簡単に固定できるものではなくなっていきます。だからこそ、目の前の課題に対し、その都度ゼロから開拓しなければならないのです」

豊田氏は新しい概念を発想するために、建築雑誌をほとんど読まない。むしろ数学や物理学、分子工学の理論書を読むほうがインスピレーションにつながるという。

「あるロジックや理論がヒントになるときもありますし、新しい技術や機能がヒントになるときもあります。デジタル化の進展によって世界が大きく変わろうとする中で、新しい価値を生み出すためにも、既存の世界に閉じこもらない新しいアプローチが重要になっているのです。これからは、20世紀の日本社会を牛耳ってきた、いわゆる昭和の成功モデルにとらわれてはならないと思っています」

次ページ新着想を得るために、ジーンズをはいてすることとは?