
一般的な会議施設や展示場、ホテルなどとは異なり、その都市ならではの演出ができると世界的なトレンドとなっているユニークベニュー。欧米諸国では新たな財源や顧客層の獲得を目的に、20年以上前から取組が行われている。ロンドンの自然史博物館やパリのルーブル美術館などが有名だ。
2019年7月初旬、都内で魅力あふれるユニークベニューを紹介し、MICE活用を促すためのレセプション「TOKYOユニークベニューショーケースイベント〜TOKYO cool traditions〜」が両国国技館近くにある刀剣博物館で開催された。
刀剣博物館は、日本刀文化を普及させるため1968年に代々木に開館。2018年から両国・旧安田庭園の一角に移転、日本を代表する建築家である槇文彦氏の設計のもとリニューアルオープンした。刀剣類、刀装具、金工資料、古伝書などを多数所蔵しており、国宝の「太刀 銘 延吉」など国の指定・認定物件も数多く所蔵する日本有数の博物館だ。
ショーケースイベントを実施した理由について、東京観光財団コンベンション事業部次長の藤村博信氏は次のように語る。
「一般的に会議・レセプションが行われることが多いホテルや宴会場とは異なり、刀剣博物館などのユニークベニューはMICE主催者や参加者にこれまでにない特別な体験を提供することができます。しかし日本では新しい取組のためまだまだ認知度が低く、利用者にとって活用方法がわかりづらいといった課題もある。そこで、我々が開発してきたユニークベニューでどのような体験ができるのかをお伝えするために、ショーケースイベントを実施いたしました」
今回のイベントには、各国大使館や外資系企業関係者など100人以上が参加した。まずは、3階展示室にて開催中の「現代刀職展」を見学。高松宮記念賞を受賞した太刀をはじめ、選び抜かれた多数の刀剣や刀装具が凜々しく並び輝きを放っていた。1階ホワイエでは和楽器&ジャズセッションの心地よい音楽が演奏され、外に出ると竹灯籠でライトアップされた旧安田庭園がイベントの特別感を演出する。華やかなオープニングセレモニーの後、武蔵一族による忍者パフォーマンスや刀剣研磨のデモンストレーションが始まった。
研ぎ師の藤代興里氏・龍哉氏ら名人による真剣の研磨は、その精神を集中させる所作に得も言われぬ緊張感が漂い、思わず息をのんで見入る場面も。参加者からは「本物の刀剣を近くで見たのは初めて。日本酒バーや和楽器ジャズなど日本らしさが凝縮されたすてきなイベントだった」などといった感想が寄せられた。
刀剣博物館は、広々とした講堂や休憩スペースを備えている。また、江戸時代に整備された旧安田庭園に隣接していることから、日本の伝統美に関心がある利用者にとって、イベントやレセプションを開催するのにうってつけの施設だろう。
東京都は、インバウンドなど観光関連のノウハウを有する東京観光財団と連携し、都内ユニークベニューの活用促進に向けて取り組んでいる。東京都産業労働局観光部企画調整担当課長の山﨑貴晃氏は、「東京都では、14年度からユニークベニューに関する事業を開始し、以降その活用促進に向けた取組を展開しています。具体的には、利用可能な施設の調査・開発やユニークベニュー紹介パンフレット作成のほか、主催者らのニーズに応じたユニークベニュー施設を紹介したうえで、イベントなどの開催に関わる各種調整を総合的に支援するワンストップ総合支援窓口『TokyoUnique Venues』の運営に取り組んでいます」と語る。
東京観光財団の藤村氏はこの取組についてこう続ける。「ワンストップ窓口の運営を通じ、こちらが当初想像していた以上にユニークベニューには高いニーズがあることがわかりました。MICEやレセプションなどの開催に際し、従来のホテルやイベントスペースなどに代わるユニークベニューへの期待や要望を主催者やプランナーから数多くいただいております。我々としては、『伝統と革新』を併せ持つ東京のユニークベニューの活用事例を増やし、その魅力を発信することに注力していきたいと思います」
ユニークベニューの利用推進には、地域資源を活用して都市の新たな魅力を発信することで、東京の都市としてのプレゼンスを高める狙いがある。東京都・東京観光財団は今後も、旧前田邸をはじめとした都内有数のユニークベニューで「TOKYOユニークベニューショーケースイベント」を開催する。