
質問が思考のスイッチを入れる
今、あなたはなぜこのページを読んでいるのだろう?
“タイトルが気になったから……、自分の関心領域のことが書いてありそうだから……、自分の知っている人が登場しているから……”
読み始めた理由はさまざまだろうが、多くの人はおそらく「自分はなぜこのページを読む気になったのか」と考えているに違いない。
そう、人は質問されると、その答えを見つけ出そうと考えを巡らせる。つまり、質問が思考のスイッチを入れるということだ。
だから人を育てるときは、指示を出すだけでなく、まず質問をして、その人自身に考えさせることが大切になる……というと、多くの人が「そんなことは言われなくてもわかっている」と思うだろう。日本でも1980年代以降、コーチングがマネジメントに積極的に取り入れられるようになり、質問することの意義が広く知られるようになった。
けれども、誰にどのような質問をするのが最も適切か、と問われて即答できる人は、そう多くはないはずだ。
代表取締役社長
荻野純子
「質問することの重要性は理解していても、質問の仕方がよくわからない、うまく使いこなせないなどと、組織や会社を成長させたい経営者や、人を育てる立場であるマネジメント層の方からよく相談を受けます」
FCEトレーニング・カンパニーの荻野純子代表取締役社長はそう語る。
同社は「働くを『もっと』おもしろくする」をテーマにトレーニングやコンサルティングを実施している企業だ。中堅・中小企業から大手企業まで1500社を超える企業の成長をサポートし、フランクリン・コヴィー・ジャパン社とのパートナーシップ契約に基づき「7つの習慣®Innovative Mind」プログラムの研修も行っている。
4段階の成長フェーズを理解する
では、マネジメントの場面においては、誰にどのような質問をすればいいのだろうか。
荻野氏は、相手の成長フェーズに合わせた質問をするべきだと説く。成長フェーズとは、「ルーキー」「ウォーリー」「シーソー」「ハイパフォーマー」の4段階だ。
「ルーキー」は、意欲はあるがスキルがない新人状態のこと。「ウォーリー」は、スキルが成長途上のため自信が持ちきれない人のことだ。入社2~3年目の若手社員や、管理責任のない社員などが相当する。次の「シーソー」は、スキルはあるが、意欲が安定しない人のこと。入社3~5年目以降の社員や、管理責任のないリーダー社員など「やればできるのに、何だかもったいない……」と思う社員があなたの会社にもいるのではないだろうか。最後の「ハイパフォーマー」はスキルも意欲も高い安定して成果を出せる人のこと。
「よくしがちなのは、ルーキーに対して、ハイパフォーマーにすべき高度な質問をしてしまうことです。『目標達成するには、何を変えることが必要?』など、ルーキーには答えられないような質問を繰り返していると、上司が期待する答えを出せない自分にますます自信を喪失し、質問されるのが怖くなってしまいがちです。しかもそのことに上司ががっかりすると、それが部下に伝わり、さらに自信をなくすマイナスのスパイラルに陥ります。逆に、ハイパフォーマーにルーキー向けの質問、例えば『今、うまくいっていないことはどんなこと?』と確認するような質問をすると、ハイパフォーマーは自分がばかにされたような気になり、モチベーションを下げてしまう可能性があります」
そうした事態を避けるためには、とにかく部下の状態をよく観察し、理解することが大事だと荻野氏は言う。例えば新入社員はまさにルーキーだが、新しい部署に就いたばかりの人もルーキーに入る。営業職としてはハイパフォーマーでも、人を育てるマネジャーとしてはルーキーかもしれない。相手の適切な成長フェーズを理解するというステップを踏めば、どんな質問をすればいいかある程度わかってくるのだという。
そうして適切な質問をしていると、相手は自分で考え始め、主体的に行動するようになり、自分の行動に責任感が伴ってくる。自分で考え、自走する人材に育っていくのである。
質問PDCAが成長を加速させる
ここで大事なのは、「何を自ら考えてもらうのか」ということだ。そこで軸となるのが「PDCA」である。ただやみくもに質問をするのではなく、「部下が自らPDCAを回せるように」「相手の成長フェーズに合わせて」質問をするのがポイントだ。
例えば、ルーキーがP(計画)の段階ならば「目標を達成するために、やったほうがいいと思うことは何?」などと質問し、D(実行)の段階に入るときは「実行するうえでの不安は何がある?」と問う。さらに例えばシーソーに対して、C(評価)やA(改善)の段階では「現状の結果を生み出している事象とその理由は?」「どんなプランに改善しますか?」と質問するというように。
こうして、相手の成長フェーズに合わせた質問でPDCAサイクルを回し、人を育てるメソッドを同社は「質問PDCA」として体系化し、「xDrive」(ドライブ)という会議型サービスとしてクライアントに提供している。驚くべきことにこの「xDrive」を導入したことで、売り上げや利益が短期間で急増したり、過去最高収益を実現したり、生産性が大幅にアップするような企業が続出しているという。

「実は私も、以前はマネジメントが得意ではありませんでした。クライアントの業績は伸ばすことができるのに、私自身の部下やチームはうまく育てられていなかったのです。でもあるとき、質問することの重要性に気づいたことで、私自身が変わることができたのです」
そう語る荻野氏にとって、マネジメントや人を育てるというのは、その人の可能性を引き出すことだという。そのためには適切な質問をすることが決定的に大事になるのだ。
「『質問しても、答えが返ってこなかったらどうするのか』『適切ではない質問をしたら逆効果ではないか』という相談をよく受けます。その多くは相手の成長フェーズを理解せずに画一的な質問をしていることが問題です。そういったケースの対処法も別途ありますが、でも、失敗してもいいではないですか。トライ&エラーをしないと質問はうまくなりません。失敗してもめげずにトライ&エラーを繰り返す。それだってPDCAではないですか」
質問PDCA xDriveを通じての最終目的は、参加する経営者、マネジメント層の方々に“質問PDCA”を使い自走する組織をつくってもらうことだという。座学ではなく、現場の目標を共に追いながら体感してもらえる仕組みが、多くの企業の成長に貢献できているのではないだろうか。
荻野純子著 キングベアー出版
荻野氏は自ら確立した「質問PDCA」の理論を『xDrive 質問でPDCAは加速する』(キングベアー出版)という本にまとめている。またFCEトレーニング・カンパニーは東京と大阪で定期的に質問PDCA xDriveを無料体験できる経営層向けセミナーも行っている。
さて、最後の質問にしよう。
「自分で考え行動する組織」をつくりたいあなた、ここまで読み終えて、次のアクションはどうしますか?
