インバウンド増加中も「旅館」人気が鈍い理由 地方の「コト消費」を望む訪日客の心理とは
地方での「コト消費」を期待する訪日客の拡大
「インバウンドはターニングポイントの時期を迎えています」
そう語るのは、みずほ総合研究所主任エコノミストの宮嶋貴之氏。
訪日外国人旅行者(以下、訪日客)の数は現在も伸び続けているものの、伸び率は1桁台に落ち着いてきた。今は量よりも質を指向すべき転換期に来ている。
「インバウンドの消費動向は2015年ごろの爆買いブーム以降落ち着いていて、支出単価は伸びていません。だからこそ、これからは人数で稼ぐのではなく、1人当たりの単価を引き上げて底上げを図っていくことが重要になってくる。言い換えれば、どのように満足度を高めてお金を使ってもらうか。そこにビジネスや政策の軸足を移していくべき時期にきています」(宮嶋氏)
同時に、訪日客の目的地も変化してきている。これまでの定番だった東京、大阪、京都という三大都市圏から、北陸や中国、四国などの地方へとシフトしているのだ。国土交通省令和元年版 観光白書によれば、訪日客の地方訪問者数は15年に初めて三大都市圏(※)のみを抜き、18年には三大都市圏のみが1319万人に対して地方部訪問が1800万人と、大きく引き離している。
(※)三大都市圏とは、「東京、神奈川、千葉、埼玉、愛知、大阪、京都、兵庫」の8都府県を、地方部とは三大都市圏以外の道県をいう。下グラフも同様。
訪日客の消費額を見ても、地方の伸びは勢いがある。近年では、各県が連携して広域で訪日客の周遊を促す取り組みが行われており、成果はじわじわと上がっているようだ。
上図のように、能登半島の形を竜の頭に見立てた「昇竜道」の中部北陸地域の9県や、瀬戸内海に面した瀬戸内7県の消費額は、東京に比べ著しく伸びている。とくに瀬戸内の島々は、自然の景観だけでなくさまざまなアート作品を楽しめる観光地として、海外から注目されているのだ。