「キャッシュレス」導入が店舗を強くする理由 市民権を得たキャッシュレス決済の現状
「あなたはキャッシュレス決済が使えないとわかった店舗について、来店意欲が下がりますか」という問いに対して、「とても下がる(12.3%)」「どちらかというと下がる(41.2%)」の合計は53.5%に達している。また、「あなたは、飲食店などでキャッシュレス決済ができないとわかって、来店をやめたことがありますか」という問いには、「頻繁にある(2.4%)」「時々ある(12.0%)」「まれにある(24.9%)」と、約4割(39.3%)が行動を変化させているのだ。
調査では、サービスを提供する店舗側の調査もしている。会計時キャッシュレス決済に対応していない、あるいは一部導入しているという店舗に「お客さんから要望(ご意見)を言われることがありますか」と尋ねたところ、「頻繁にある(10.7%)」「時々ある(29.3%)」「まれにある(28.7%)」と、約7割(68.7%)がキャッシュレス決済対応の「要望を受けたことがある」と回答している。
今後はキャッシュレス決済への対応の有無が、店舗の集客や売り上げを左右するかもしれない。
一方、日本の一般消費者の中には、キャッシュレス決済を利用したくても「少額だと嫌がられるのではないか」と感じる人がいまだに多い。伊藤氏は「それは誤解です」と語る。
実際、調査によれば、コンビニ店員(79.0%)、居酒屋店員(78.0%)、タクシー運転手(76.0%)と、それぞれ8割近い人が「キャッシュレス決済を利用してほしい」と回答していている。例えば、タクシー運転手にとっては釣り銭を用意する手間が軽減され、支払いや降車がスムーズになるといったメリットもある。店舗においては面倒なレジ締め作業も軽減できるだろう。
業種は違っても、現場ではキャッシュレス決済が歓迎されていることを如実に表している。
インバウンド需要の取り込みについても、キャッシュレス決済は追い風となる。読者の皆さんも経験があるだろうが、通貨の異なる国を訪れる際、旅行者は無駄のない両替に努める。足りないと困るが、余ってもどうしようもないからだ。そんなときにキャッシュレス決済があれば、無駄が出ないように調整できるため選ばれやすいだろう。そもそも、自国でキャッシュレス化の進んでいる旅行者の場合、旅行先でも必然的にキャッシュレス決済を選択するのは自明だ。
事業者、店舗に吹く「追い風」とは
ジェイエムエス(JMS)事業推進本部長の杉山二郎氏は、「2019年10月の消費増税、キャッシュレス・消費者還元制度の施行を前にした今は、キャッシュレス決済導入を検討する絶好の機会です」と話す。JMSは、JCB、三菱UFJニコス、ユーシーカードの3社の出資により設立された決済サービス会社だ。
そんな中、経済産業省によるキャッシュレス・消費者還元制度は19年5月に申請受け付けが開始された。