金融機関発の認証プラットフォーマーに 数分で口座開設を可能にする最新技術
認証プラットフォームで安心・安全で便利なデジタル社会に貢献
本来トレードオフの関係にある「セキュリティー」と「ユーザビリティー」を両立させることができたのには、同社の成り立ちが大きく関係しているという。
同社は、三井住友銀行のモバイルアプリへの導入を検討するプロジェクトチームが前身。プロジェクトは成功したが、生体認証のプラットフォームをつくってオープンにしたほうが社会にも貢献できると考え、事業化を目指して17年に新会社を立ち上げた。
出資したのは、三井住友フィナンシャルグループのほか、金融分野のシステム開発に強いNTTデータと、生体認証の世界的企業で、各国の出入国管理でもその技術が使われているデオン社。それぞれの強みを結集してサービス開発を行ったが、最も苦労したのはセキュリティーの部分だという。
「私たちは三井住友銀行グループの一員のため、サービスも銀行のセキュリティー基準をクリアする必要があります。銀行が求めるセキュリティー基準は非常に厳しく、それをシステムに落とし込むのは大変でした」(中川氏)
一方で、銀行のセキュリティーレベルと同等であるということは、同社にとって大きなアドバンテージになる。
冒頭で紹介したように、銀行以外にも顧客の本人確認を必要とする事業者は多い。例えば、業法で本人確認が義務づけられているリサイクルショップや携帯電話会社、マッチングサイト運営会社、民泊業者などのほか、法規制はなくても、レンタルやシェアのサービスでは本人確認を行っている。
こうした事業者にとって、e−KYCのパートナーは、顧客の個人情報を安心して預けられることが必須条件だろう。その点、あらゆるレイヤーにおいて銀行と同じレベルでセキュリティー対策を講じている同社は、心強いパートナーになるだろう。
確かな技術で本人確認を容易にしたポラリファイだが、代表取締役社長の和田友宏氏は早くもその先を見据えている。将来の展望について次のように明かしてくれた。
「生体認証のポテンシャルは高く、口座開設への活用にとどまりません。近年、IDパスワードは複雑・多文字化していますが、口座開設でお預かりした生体情報を使って認証を行えば、簡単にログインや取引ができます。さらに、店頭で自動的に顔を検知して照合を行う、つまり、キャッシュレスからさらに進んだ、何も持たずに買い物ができるウォレットレス、カードレスの世界を実現することも技術的には可能です。
私たちは現在、生体認証をベースにしていますが、リスクに応じてほかの認証方法と組み合わせることも視野に入れています。総合的な認証プラットフォームをつくって、安心で便利なデジタル社会に貢献していきたいと考えています」