「リアル」と「web」の融合で市場を創造 アイルが生み出した独自のビジネスモデル

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具体的なソリューションとしては、基幹業務システムの「アラジンオフィス」、BtoB ECシステムの「アラジンEC」、複数のネットショップの在庫データなどを一元管理できる「CROSS MALL(クロスモール)」、実店舗とECサイトの顧客・ポイントを一元管理できる「CROSS POINT(クロスポイント)」などがある。

福島氏は「多くのITプロジェクトでは、求められる機能ごとに複数の企業が集まって寄り合いのようになりがちです。その場合、連携がうまくいかないこともありますが、アイルでは最初からそのインターフェースが出来上がっているのは強みですね」と話す。

大げさでなく、「『リアル』と『web』の融合といえばアイル」が証明されるようになってきているという。岩本氏は「当初は中小企業向けに『リアル』と『web』を融合させるソリューションを開発・提供してきましたが、最近では大手企業から直接当社のソリューションが指名されるケースが増えてきました」と語る。

自社と顧客との関係は「50:50」自信を持って本質を語る

ワンルームマンションの1室で、5人でスタートした同社は、07年6月には大阪証券取引所ヘラクレス市場(現ジャスダック)に上場、18年6月には東京証券取引所市場第二部に市場変更、19年7月には一部指定するまでになった。

福島氏は業績の推移について以下のように話す。「創業以来順調に売上高を伸ばしていますね。10年7月期にはリーマン・ショックの影響により一時的に減少しましたが、その後は再び大幅に伸び、18年7月期の売上高は当時の3倍にもなっています。直近も増収増益を続けていますが、要因としてはやはり徹底して、お客様のニーズに応えてきたということでしょうか」。

「リアル」と「web」を1社で提案できることが同社の強さにつながっているということだろう。興味深い数値がある。「新規商談営業勝率は93.0%、ユーザーリピート率は98.2%に達しています(いずれも19年7月期第2四半期末)」と岩本氏は紹介する。独自の優位性により自然と無競合になるとともに、顧客企業数が継続して増えているわけだ。

顧客からの評価の高さもうかがえるが、岩本氏は「お客様の声を聞くことは大切ですが、それはお客様の言いなりになるということではありません。『お客様は神様』だと、当社が0、お客様が100ということになってしまいます。そうではなく、当社とお客様の関係は50:50でありたいと考えています」と話す。

福島氏は「貴社は親会社を持たない独立系企業ですが、そのことも『50:50』を実現できる背景の一つになっているのでしょうね」と指摘する。自社製品・サービス比率が高いことに加えて、リピート率も高いため、安定的な収益構造があるわけだ。目先の売上高や利益にとらわれない顧客視点での提案もできるという。

「社員にはいつも、何が大切なのか、物事の本質を見るよう言っています。お客様が間違っているならば、はっきりと言うべきです。それで叱られてもかまわない。最後は上司が責任を取るからと言っています」と岩本氏は話す。同社なら、若手社員でも、のびのびと思い切った提案ができるに違いない。一人ひとりの成長も早いだろう。

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