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「リアル」と「web」の融合で市場を創造 アイルが生み出した独自のビジネスモデル

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  • アイル 制作:東洋経済企画広告制作チーム
ICTが企業の経営活動に欠かせないものになっており、関連サービスを提供する企業も増えているが、競争も激しく、淘汰も進む。そうした中、基幹系の業務ソリューションとweb系の業務・販促ソリューションという「リアル」と「web」を融合させる独自のビジネスモデルを生み出し、成長を続けているのがアイルだ。一見正反対にも思える両者のクロスオーバーはどのようにして生まれたのか。また成功のポイントはどこにあるのか。アイルの岩本哲夫社長に、ジャーナリストとして数多くの企業、経営者を取材してきた福島敦子氏が尋ねた。

ワンルームマンションの1室で5人の仲間が集まって創業

福島氏はまず、「成功している経営者の中には、学生の頃から起業を目指す人もいますが、一方で、会社を起こすことなど考えてもいなかったという人も少なくありません。岩本社長は大手情報サービス会社でトップセールスを記録するほどの営業マンだったそうですが、創業しようと思ったきっかけはどこにあったのでしょうか」と尋ねた。

アイルの設立は1991年。まさにバブル崩壊後の激動の時である。大阪のワンルームマンションに岩本氏と4人の営業マンの仲間が集まって始めたという。

アイル代表取締役社長
岩本 哲夫
Tetsuo Iwamoto
日本大学卒。大塚商会に入社後、法人システム営業のトップセールスに。91年に株式会社アイルを設立。07年ヘラクレス、18年東証二部、19年東証一部に上場。コミュニケーションを重視し、表面的ではない、社員を感情で動かす社員教育や独自の企業文化が注目されている。

「前の会社の上司などからは、『何不自由ない地位にいるのに、どうしてわざわざ苦労をしにいくのか』と言われました。しかし、当時の部下と一緒にやりがいのある仕事をしたいと感じましたし、何より、会社の名前を抜きにして、どれだけやれるか挑戦したいという思いもありました。そういう点では、『一緒にやりたい』という仲間に背中を押されて創業したというのが正直なところです」と岩本氏は振り返る。

IT関連の大手企業から独立し創業する例は珍しくない。ただ、その多くは大手の下請けからスタートするのが一般的だ。中には独立前の企業からの発注をあてにして創業するところもある。それに対して岩本氏は「私たちはやるのだったら元請けでやりたいと考えました。大手コンピューターメーカーにも『直取引をさせてくれ』と言いに行きました」。

IT業界では、特約店から始まり、3次店、2次店、1次店と実績を積み重ねてようやく直取引ができるというのが常識である。福島氏も「営業マン5人しかいない小さな会社が、スタートからそのような条件で取引ができるのは異例です。なぜそれが実現したのですか」と疑問を抱く。

岩本氏は「われわれの熱意にほだされたというか、『面白そうなやつらだからやらせてみようか』というのもあったと思います」と答える。

一見、むちゃな行動に思えるが、独立前にはトップセールスを記録した仲間が集まった会社である。古巣の大手情報サービス会社が回りきれない中小企業を中心に営業活動を行い、瞬く間に好成績を達成し、ベンダーから表彰されるまでになった。

「リアル」と「web」を融合する独自のビジネスモデルを創出

ジャーナリスト
福島 敦子
Atsuko Fukushima
津田塾大学卒。NHK、TBSで報道番組を担当。テレビ東京の経済番組や、日本経済新聞、経済誌など、これまでに700人を超える経営者を取材。講演やフォーラムでも活躍。上場企業の社外取締役や経営アドバイザーも務める。

福島氏は、「成長を維持できる企業には、他社にはない優位性があります。その点では、『リアル』と『web』を融合する『CROSS-OVERシナジー』戦略が貴社の強さであると感じます。改めてその特長をご紹介ください。またなぜその戦略に至ったのでしょうか」と尋ねた。

「リアル」とは基幹系の業務管理システムやITインフラを、「web」とはECサイトの一元管理や販促システムなどを指す。両者の連携を、アイルでは『リアルとwebの融合(CROSS-OVERシナジー)』と呼んでいる。

岩本氏は「一般的に、IT事業者は『リアル』か『web』か、どちらかしか開発・提供できません。しかし、実際のビジネスの現場では両者の連携が不可欠になってきています。当社は、2006年から10年以上にわたり、両者の自社サービス開発や、連携ノウハウの蓄積に注力してきました。現在、1社でこれができるのは当社だけだと自負しています」と胸を張る。

具体的なソリューションとしては、基幹業務システムの「アラジンオフィス」、BtoB ECシステムの「アラジンEC」、複数のネットショップの在庫データなどを一元管理できる「CROSS MALL(クロスモール)」、実店舗とECサイトの顧客・ポイントを一元管理できる「CROSS POINT(クロスポイント)」などがある。

福島氏は「多くのITプロジェクトでは、求められる機能ごとに複数の企業が集まって寄り合いのようになりがちです。その場合、連携がうまくいかないこともありますが、アイルでは最初からそのインターフェースが出来上がっているのは強みですね」と話す。

大げさでなく、「『リアル』と『web』の融合といえばアイル」が証明されるようになってきているという。岩本氏は「当初は中小企業向けに『リアル』と『web』を融合させるソリューションを開発・提供してきましたが、最近では大手企業から直接当社のソリューションが指名されるケースが増えてきました」と語る。

自社と顧客との関係は「50:50」自信を持って本質を語る

ワンルームマンションの1室で、5人でスタートした同社は、07年6月には大阪証券取引所ヘラクレス市場(現ジャスダック)に上場、18年6月には東京証券取引所市場第二部に市場変更、19年7月には一部指定するまでになった。

福島氏は業績の推移について以下のように話す。「創業以来順調に売上高を伸ばしていますね。10年7月期にはリーマン・ショックの影響により一時的に減少しましたが、その後は再び大幅に伸び、18年7月期の売上高は当時の3倍にもなっています。直近も増収増益を続けていますが、要因としてはやはり徹底して、お客様のニーズに応えてきたということでしょうか」。

「リアル」と「web」を1社で提案できることが同社の強さにつながっているということだろう。興味深い数値がある。「新規商談営業勝率は93.0%、ユーザーリピート率は98.2%に達しています(いずれも19年7月期第2四半期末)」と岩本氏は紹介する。独自の優位性により自然と無競合になるとともに、顧客企業数が継続して増えているわけだ。

顧客からの評価の高さもうかがえるが、岩本氏は「お客様の声を聞くことは大切ですが、それはお客様の言いなりになるということではありません。『お客様は神様』だと、当社が0、お客様が100ということになってしまいます。そうではなく、当社とお客様の関係は50:50でありたいと考えています」と話す。

福島氏は「貴社は親会社を持たない独立系企業ですが、そのことも『50:50』を実現できる背景の一つになっているのでしょうね」と指摘する。自社製品・サービス比率が高いことに加えて、リピート率も高いため、安定的な収益構造があるわけだ。目先の売上高や利益にとらわれない顧客視点での提案もできるという。

「社員にはいつも、何が大切なのか、物事の本質を見るよう言っています。お客様が間違っているならば、はっきりと言うべきです。それで叱られてもかまわない。最後は上司が責任を取るからと言っています」と岩本氏は話す。同社なら、若手社員でも、のびのびと思い切った提案ができるに違いない。一人ひとりの成長も早いだろう。

一人ひとりの主体性・積極性がアイルの成長を支えている

福島氏は、「数多くの企業や経営者を取材する中で、成長する企業、成功する企業は共通して、優れた企業文化を持っていると感じていますが、岩本社長が大切にされてきたことは何でしょうか」と尋ねる。「企業は人なり」というが、連結社員数が660人余りに成長した今、創業当初からの文化をどのように守っているのだろうか。

「まずは情報を徹底的にオープンにすることですね。そのためにも、創業時から月1回全社員が参加する『月報会議』を行っています。インサイダー情報となる部分を除き、すべての情報を公開しています。このほか、毎月、優秀な成績を収めた社員と一緒に食事をする『社長会食』なども行っています」と岩本氏は紹介する。

そう言うと、岩本氏のカリスマ性による「鶴の一声」で仕組みがつくられているように思うかもしれないが、「私の意見よりも社員の意見によって新たな仕組みができることのほうが多いのです。当社では『プチ社長』と呼んでいるのですが、社員一人ひとりが社長の自覚を持ってアイデアを形にしています」(岩本氏)。

例えば、前述した「月報会議」は情報がオープンになるというメリットがあるものの、会議時間が長くなりがちだったため、社員の意見により、要点をコンパクトに伝える形式に変更された。このほか、昼の休憩が12時からだと飲食店が混むので、11時30分からにするといったことも社員の意見から実現した。

ちなみに同社には、日々のコミュニケーションを通じて、自然と社内でキーワード化された「アイル語」なるものがあるという。「当たり前のことを当たり前に」「思い切りバットを振る」などの言葉だが、まさにこれらが社員の行動指針にもなっているわけだ。このような会社であれば、社員も仕事を楽しみ、やりがいを感じられるに違いない。実際に、同社では社員の定着率もよく、週刊東洋経済「CSR企業総覧2017年版」の「『女性新入社員に優しい』ホワイト企業500社・新卒3年後定着率の高い会社:女性編」の第1位(※)にも選ばれている。

「今後は営業利益率のさらなる向上や、海外展開なども視野に成長を続け、広く多くの方に知られ親しまれる会社になりたいですね」と岩本社長は抱負を語る。

福島氏も「岩本社長がつねに社員に気づきを与え、社員は失敗を恐れず、主体的に積極的に仕事にチャレンジしていく。そのダイナミズムがアイルの成長を支えていると感じます」と印象を述べた。その言葉どおり、同社のユニークなビジネスモデルや取り組みがさらに注目を集めることになりそうだ。

※出典:「CSR企業総覧2017年版」