災害時も「止まらない医療」をBCPで実現へ 「決して当たり前ではない」課題解決に挑む

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協和医科器械
取締役 執行役員 神奈川営業本部長
坂上聡

メディアスホールディングスの前身である協和医科器械は静岡に本社がある。東海地区を拠点とすることから、もともと地震などの災害に対する意識が高く、BCPに積極的に取り組む素地があったという。実際、東日本大震災では、グループ企業である群馬を本拠とする栗原医療器械店をはじめ、各拠点で被害が出た。とくに震災後の計画停電などで出荷業務が停滞して発送に遅れが生じ、医療インフラを担う企業としての責任を痛感したという。

「地域医療の核となる医療機関を支える当社は、災害発生時も医療の提供に必要な医療材料を供給し続けなければなりません。地震だけでなく台風や豪雨、雪など、どんな災害が発生しても、その責務を全うしなければなりません」(協和医科器械・取締役・執行役員・神奈川営業本部長・坂上聡氏)

免震構造の物流倉庫を選定

そこで同社では、神奈川県の橋本エリアに首都圏物流センターを開設し、供給体制を強化した。現在、協和医科器械が担当する神奈川と山梨、栗原医療器械店が担当する東京と千葉の供給倉庫として運用している。とくに首都圏エリアである東京、神奈川の顧客向けに医療機器や医療材料を安定供給するため、数にして常時約1万5000種類の在庫を保有している。物流と情報システムの管理を統括するメディアスホールディングス・コーポレートインフラ本部・本部長の酒井辰一氏は、こう話す。

「首都圏には大学病院の本院を含む多くの医療機関と人口が集中しています。橋本に物流倉庫を構えたことで、以前より安定的かつ迅速に医療機器・医療材料を供給する環境を整備することができました」

メディアスホールディングス
コーポレートインフラ本部 本部長
酒井辰一

首都圏物流センターには、地震に強い免震構造が採用されている。さらに、トラックが乗り入れる際のスロープであるランプウェイも免震構造になっているという。

「72時間の自家発電装置や衛星電話も備えられています。また、橋本エリアは地盤も強固で、かつ内陸部のため液状化リスクも少ない。目の前には、緊急輸送の骨格を成す第1次緊急輸送道路である国道16号線が通っており、都心部への供給ルートも確保しやすくなっています。今後、さらなるBCPの強化を図るため、災害の発生地域による災害対策本部の分散、衛星電話の追加配置、現実に即した防災訓練などにも取り組んでいきます」(酒井氏)

メディアスグループは、神奈川県の橋本エリアに首都圏物流センターを開設。この首都圏物流センターには、地震に強い免震構造が採用されている。写真上は免震ダンパー。写真下は非常用電源設備

つねに医療従事者に寄り添いながら、災害時でも「医療を止めない」安定供給体制の構築は、患者にとっても有益だと池谷氏が語る。

「今後はBCPにとどまらず、BCM(事業継続マネジメント)、BCMS(事業継続マネジメントシステム)へと進化させ、災害時対応を強化していきたい。そのためにも日々、医療機器の販売にとどまらず、医療機関が抱えるあらゆる課題解決のパートナーであり続けたいと考えています。そして、その先にいる"患者様のために"どのようなときも最善を尽くすよう努めてまいります」

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