ゴルフは「観る」のが楽しい! 海外ゴルフツアー中継の楽しみ方を語る

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プロゴルファー
佐藤 信人 さとう のぶひと
1970年3月12日生まれ。千葉県出身。ネバダ州立大学卒。ツアー9勝。2004年には欧州ツアーにも参戦。豊富な海外経験と知識でCS放送ゴルフネットワークなどのテレビ中継解説で活躍。現在は日本ゴルフツアー機構(JGTO)理事も務める。

佐藤 そうですね。最近の傾向を一口で言えば、ますます「パワーゲーム」、すなわち飛距離勝負になってきています。僕が全英に出場した頃は、「飛ばし屋」と言われるような選手は、ジョン・デーリー選手のほか数人で、たくさんはいませんでした。ところが今では300ヤード以上飛ばす選手がごろごろいます。このため、「全米オープン」でも一時期、フェアウェーを絞ったり、ラフを伸ばしたりしたこともありました。ただ、ギャラリーや視聴者からすれば、パワーゲームのほうがわかりやすいし、見ていて楽しいんですよ。世界トップクラスの選手がみんな、ティーショットでアイアンを持つ姿を見たくないですよね。最近では「全米オープン」も、フェアウェーを広く戻して「見せ場」をつくるようにしていますね。

ショットトレーサーを活用している中継画面

三田村 PGAツアーでは、ボールの弾道をCGで視覚化する「トレーサー」やドローン(小型無人機)などもトーナメントの中継に導入されています。PAR4のホールで、ワンオンを狙う選手が、森に向かってボールを打つと、それが森を越え、池、バンカーを越えてグリーンを捉える様子が上空からの映像で一目瞭然です。いい時代になりました。

コースの設計やセッティングの
「Risk & Reward(危険と報酬)」を知ると
観戦がさらに面白くなる

三田村 佐藤プロはメジャーをはじめ、PGAツアー中継の解説では豊富な実績がありますね。ツアーの魅力や見方のポイントを教えてください。

佐藤 まずはコースの設計やセッティングの特色です。PGAツアーが開催されるのは、すばらしい設計のコースであることに加えて、「Risk & Reward(危険と報酬)」と呼ばれる、紙一重のセッティングになることがほとんどです。「いいショットにはご褒美を、悪いショットには罰を」というわけです。ツアー中継を見ていると、選手がボールを池に入れるシーンがよくあります。世界の頂点に立つ選手がアベレージゴルファーのようなミスをしているわけではなく、池に近くタイトに切っているピンをアグレッシブに狙っていくからです。

三田村 一方で、ジャック・ニクラス選手のように「いつでもグリーンの真ん中に打つ」と語る選手もいます。「マスターズ」でのウッズ選手も最終日は確実にグリーンのセンター狙いでした。選手の性格にもよるかもしれませんね。

AONでいえば、中嶋常幸プロは「80%の確率があれば狙う」と話していましたし、青木功プロは少ないチャンスでも挑戦するタイプ。意外に思われるかもしれませんが、尾崎将司プロは慎重派でした。

佐藤 僕がお勧めしているのが、選手のバックボーンを知ることです。PGAツアーに参加している選手の中には、大学生のアマチュア時代から飛ぶ鳥を落とす勢いの人もいれば、何年も苦労してようやくシード権を得たような人もいます。ウッズ選手ではないですが、一人ひとりにドラマがあります。

さらに、PGAツアーはレギュラーシーズンの最終戦が終わった時点でのフェデックスランキング125位までが翌週からのプレーオフに進むことができます。ボーダーラインにいる選手にとっては毎週の一試合一試合、一打一打が重要になります。堅実に守りに回る選手もいれば、アグレッシブに攻めてくる選手もいます。最終日の18番ホールで、2メートルの下りのスライスライン。この一打で来シーズンのシード権が決まるとなると、どんな選手でもしびれるでしょう。

見ている側としてもそれがわかって見ているかどうかで面白みがだいぶ違います。そこで僕は、中継の解説ではできるだけこのような選手のバックボーンも紹介するようにしています。

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