これからの人事はHRテックなしでは戦えない 人材獲得競争に勝つための「戦略人事」とは?
今まで時間をかけていたオペレーション業務をはじめとした採用にかかる工数は、こうした採用管理システムを活用して一元化することにより、導入前に比べおよそ1/4にまで削減されるという。またこの「一元化」によってもたらされるメリットは工数削減のみにとどまらない。
データを一元管理することで得られる多大なメリット
戦略人事のベースとなるのは、削減した工数をいかにコア業務に当てていくかだ。その際に重要になるのは、膨大に点在する採用データを、いかに整理された状態で管理・活用できる状態にしておけるかという点である。
「理想はデータをクラウドで一元化すること。バラバラに導入している過去のシステムがあるようなら、まずそれを一元化する必要があります」と岩本特任教授は指摘する。クラウドで一元化された採用管理システムなら、面接官や役員が画面を開くだけで応募者データを共有でき、閲覧権限の制限もできるため情報漏洩リスクも少ない。さらに蓄積されたデータを分析することができ、レポートによって採用における課題が可視化される。人の感覚に頼るのではなく、データに基づく論理的な採用戦略を立てることができるのだ。
「今までおかしいと思っていたことや、人が把握できなかったことがデータとして可視化できるようになるのです。人材争奪戦が激しさを増す現在、データ分析から『こういう切り口で評価しよう』と面談のトレーニングを行ったり、内定後、入社してもらうための応募者の説得に工数を当てたりする会社が増えています。相手を説得するには自社の魅力や全体像を自分の言葉で伝えないといけませんが、これは人でなくてはできない業務ですよね。若手がそれを担当すれば、視座が上がって人材育成にもつながります」
人にしかできない業務は何か? そのコア業務を定義し、データに基づいた改善を図っていくことがこれからの人事のあり方になると岩本特任教授は言う。
「昔の日本は量産型製造業で一人ひとりの生産性はあまり変わらなかった。小売やサービス業もマニュアルで決められた画一的な売り方をするのが主流でしたが、今や個人の創意工夫や能力によって売り上げが変わり、そこに価値が置かれています。つまり、現代では、生産性=定数だったのが変数化しており、人材のマネジメントが業績に直結するビジネスが多いんです」