これからの人事はHRテックなしでは戦えない 人材獲得競争に勝つための「戦略人事」とは?

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グローバル競争や人材獲得競争が激化する昨今、人事が積極的に経営戦略に関わり競争力を高めていく「戦略人事」の導入が日本でも急速に進んでいる。戦略人事の実現には、ビッグデータ解析などのテクノロジーによる人事業務の効率化、すなわち「HRテック」の活用が不可欠だ。HRテックによって何ができるのか、また、これからの時代に求められる人事の在り方とはどのようなものになっていくのだろうか。

HRテック導入で、人にしかできないコア業務に集中

経団連と大学側との間でも新卒学生の通年採用拡大が合意され、中途も含めた採用機会が広がり、雇用の流動化が推し進められている。雇用慣行は今まさに大きな転換期を迎えている。そうした中、注目されているのが「HRテック」であり、データを活用した「戦略人事」だ。

HRテックの第一人者として知られる慶應義塾大学大学院経営管理研究科特任教授の岩本隆氏は、テクノロジーの進化がもたらす人事・採用業務の変革を次のように語る。「かつての人事の仕事は、労務管理や事務作業に時間を費やしていましたが、それらをテクノロジーで代替できるようになった現在、人事は人にしかできない業務、いわば生産性を上げるためのコア業務へ付加価値を見いだしていくようになりました。それを手助けするさまざまなHRテックが登場しているのが、今の大きな変化です。とくに、莫大なデータを扱うオペレーション業務の多い採用分野に関しては、HRテックの導入効果が出やすいとされています」

これまでの採用業務といえば、応募者とのやりとりや面接のアレンジ、応募者データや面接評価の管理、面接官への申し送りなど、オペレーション業務に膨大な工数が発生していた。データを手作業で表計算ソフトに入力したり、メールで受け渡しをしたり、過去の評価を確認するのにデータを探したりと、一つひとつの作業にかかる時間とストレスに悩まされる採用担当者も多いのではないだろうか。現在、HRテックは、採用関連だけでも30種以上のサービスがリリースされている。雇用の流動化・多様化にともない、恒常的な採用活動の持続と募集方法の複雑化が進んでいるが、長期間かつ多岐にわたってのオペレーション業務が増大したことにより、これら採用管理システムを活用する企業も増えているという。

採用管理システムでは、これまでバラバラになっていた応募者データの管理や、エージェントとのやりとり、スケジュール管理、面接の評価などの業務を一元化することできる。それによって、人事がより多くの付加価値を生み出す可能性につながると岩本特任教授は言う。

「生産性は、分母を時間、分子を成果の付加価値として測ることができます。人がやらなくてもいいノンコア業務をテクノロジーが代替すれば、人の工数が減り、労働時間が削減されることで、分母を小さくすることができます。採用において、テクノロジーが代替できるノンコア業務はデータの蓄積です。蓄積したデータを活用することで、面接の精度も高まり、クオリティが向上します。結果、分母を小さくするだけでなく、分子を大きくすることにも寄与し、“採用生産性”は圧倒的に上がるのです」

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