
共催:東洋経済新報社 ストライク
特別講演 東京 大阪 名古屋
あなたは人生をどう歩むか
~日本を変えた起業家からの「メッセージ」~
代表取締役会長
DDI(現KDDI)/
イー・アクセス(現ワイモバイル) 創業者
千本 倖生氏
電電公社(現NTT)のサラリーマンを辞めDDI(現KDDI)を創業した千本倖生氏は「世界経済における存在感が徐々に薄れている日本を変えるのは、起業家精神を持った経営者だ」と訴えた。米国と比較して高額な国内の長距離通話料金に疑問を抱いていた千本氏は、京セラ創業者の稲盛和夫氏に「電電公社に対抗する、民間の通信会社をつくりませんか」と説き、1984年に稲盛氏らと共同でDDIを設立。「通信業界に自由な競争環境を作ることが日本の将来のためになる」という使命感で、今や時価総額約7兆円企業の礎を築いた。
日本の通信自由化を先駆けた経験から「経営者は世界を見渡して他人より半歩先にトレンドを見つける鋭敏さが大事である」ことを強調。ブロードバンド革命を目指した99年のイー・アクセス(現ワイモバイル)創業では、約3カ月かけて考え抜いたビジネスプランを説明し、米国の投資銀行から資金調達に成功したことに触れ「リスクはむやみに取ればいいわけではない。徹底した準備が大切」と語った。その後、同社が資金難に陥った時も諦めず、稲盛氏の「苦しくても、社会のためになる事業ならやり抜け」という言葉を支えに、投資ファンドCEOに直談判し、追加出資を取り付けた。そして現在、日本最大級の洋上風力発電をはじめとした再生可能エネルギーによる事業に全力で挑む千本氏は「世界の大局をみて傍観者にとどまらず、自ら行動を起こすことが何よりも重要」と、日本の奮起を促した。
特別講演 福岡
挑戦に終わりはない!
新商品開発、強い組織風土創り、買収・再建、
後継者育成の視点からひも解く
アイリスオーヤマが成長し続ける理由
代表取締役会長
大山 健太郎氏
アイリスオーヤマ、大山健太郎氏は、時代に対応して事業モデルを変遷させてきた同社の歴史を振り返った。19歳で東大阪のプラスチック加工の町工場を継ぎ、20代で、ガラスに代わる真珠養殖用浮き球、木箱に代わる育苗箱など「アイデアと技術を生かしたプロダクトアウト」のプラスチック製品をヒットさせた。だが、オイルショック需要のリバウンドで苦境に陥り「マーケットイン」経営を目指し、メインマーケットに近い宮城の大河原工場を残して東大阪工場を閉鎖。東北に拠点を移した。
そこでたどり着いたのが「自身が代弁者になり、生活者が気づいていない需要を掘り起こすユーザーイン」の発想だった。育苗箱の技術を生かしたプランターなどの園芸用品、部屋の中で飼うためのペット用品といった、新たな商品を開発。ホームセンターに供給するメーカーベンダーとして新市場を創造した。さらに、原料メーカーと一緒に開発した中身が見えるクリア収納ケースを大ヒットさせ、海外にも展開してグローバル企業に飛躍した。東日本大震災後は、省エネという日本の課題を解決するLED照明事業を拡大。徹底した内製化でコストを抑えて低価格を実現した。その後も、低温精米の米、布団乾燥機など家電に進出。「会社が2代、3代と存続するためには、いかなる時代環境でも利益を出せる仕組みが必要。仕組みには生活者と直接つながるユーザーインがカギ」と語った。
特別講演 札幌
流通の諸行無常
代表取締役社長
横山 清氏
北海道と青森、岩手両県で食品スーパーを展開するアークスの横山清氏は「諸行無常、変化のないものはない。特に流通業界は激しく動いている」と業界の状況を語った。横山氏は61年に商社から出向する形で、北海道の旧ダイマルスーパー(現アークス)に入社。85年に社長に就任し、数多くのM&Aを繰り返しながら年商5200億円規模の企業に成長させてきた。
M&Aは「単純な足し算ではない。気持ちが一致した相手と手を組む『マインド・アンド・アグリーメント』が大事」という考えで推進。M&A後は、アークスは持ち株会社の立場にとどまり、各グループ会社の経営陣は業績に責任を負うことを前提に、自由な経営を認め、顧客との距離の短い中規模のグループ会社が並ぶことで強みを発揮する「八ヶ岳連峰経営」を掲げる。これまで生き残ってきた原動力に「危機感」を挙げ、「獲れたイワシは、ナマズのいる船内のいけすに入れておくと、緊張から、生きたまま漁港に水揚げできる」という伝説を引いた。今後については、過去、消費増税のたびに流通業界再編が進んだ歴史を振り返って「第3次流通大再編が起きるのではないか」と予測。その備えとして、東日本エリアに強いアークスと、中日本のバローホールディングス、西日本のリテールパートナーズが18年末に提携したことを紹介し、「アークスで年商1兆円、3社で3兆円の大夢に向けて、経営資源と叡智を集めたい」と語った。
課題解決講演
会社を発展させるM&A活用と事例紹介
代表取締役社長
荒井 邦彦氏
18年の日本企業のM&A件数は過去最高を記録した。M&Aを仲介するストライクの荒井邦彦氏は、金融緩和で資金調達環境は良好だが、国内市場の縮小で設備投資を手控える企業が、事業承継問題で岐路に立つ優良中小企業の買収に成長機会を求めるという構図を示した。実際に成長企業はM&Aをうまく活用している。地質調査などを手がける年商8億円の会社は、14年前に名古屋地区進出のため、買収候補の同業者の紹介をストライクに依頼した。その時は条件に合致する相手はなかったが、将来の事業領域と検討していた測量会社を紹介され、買収。15年間に計5社を傘下に収めることで、年商約60億円の東証1部上場建設コンサル会社に成長した。「寡占化されていない業種であれば、M&Aが大きな成長につながる」と語る荒井氏は「希望条件が狭すぎると相手は見つからない。1度で満足せず、買収を続けることで戦略レベルになる」と指摘した。
大手外食チェーンが北海道の介護サービス会社を買収した案件では、大手トップ自らの訪問が成功につながったと解説。「良い会社ほど買い手を選ぶので、譲受側の経営者の姿勢が大事」と強調した。M&Aでは「小さな会社の買収から始めて、大きく育てることを心がけ、屋台骨を揺るがすような過大なリスクは避けるべき」と注意を促す一方で、「経営者は、成長機会を逃してしまう『買収しないリスク』を考慮することも大事」と述べた。また、譲渡側の成長に貢献したM&Aの事例を紹介。「大手への会社譲渡も、成長のための選択肢の一つ」と、M&Aされる側の可能性についても言及した。
M&A体験談 東京 大阪 名古屋
M&A活用による成長戦略・課題解決
代表取締役
松丸 喜樹氏
葬祭事業を核に13社のM&Aを実行してきたエスオーユーHDの松丸喜樹氏は、体験に基づくM&A成功のポイントを話した。同社は、葬儀の簡素化、競争激化など、経営環境の変化に適応してシェアを拡大するため、同業者のM&Aを推進。さらに、第2の事業の柱としてM&Aで介護サービス事業に参入した。また、経営課題の1つである人材難を解決する人材サービス会社など、シナジー効果が見える企業をグループに取り込んできた。
M&Aでは、財務状況だけでなく、相手の企業文化、魅力、気持ちを深く理解することが大切と強調。企業間で価値観に違いが大きいと、M&A後の組織、業務の統合が難しくなることから「相手企業の評価項目では、企業文化も含めるべき」とした。また、「相手に本気度を伝えることが、交渉の成否を分ける」として、商品サービスの競争力、独自ノウハウなど、その会社に固有の魅力を把握し、そこに自社の強みが加わることで、どんなシナジーを期待できるか、について具体的に話せるようになることを求めた。
一方で、相手の不安・不満へ配慮することの重要性も説いた。M&A成立後は、相手企業の従業員の気持ちを前向きにするため、目的をきちんと伝え、一体感を醸成しなくてはならない。
松丸氏は「M&Aはゴールではなくスタート。共に成長する観点が大事」と語った。
M&A体験談 札幌 福岡
M&A活用による成長戦略
専務取締役
三津原 庸介氏
全国に約600店を展開する調剤薬局大手、日本調剤の三津原庸介氏は、同社のM&Aに対する考えを語った。高齢化と医薬分業による市場拡大を背景に順調に業績を伸ばしてきた調剤薬局業界は、家族経営の小規模店の後継者難が目立ち、近年は「調剤薬局M&Aブーム」と言われてきた。しかし、さまざまな制度改定、薬剤師不足の影響を受け、経営環境は厳しさを増しており、「店を増やせば、収益も増える単純な構図ではなくなった」と分析。医療費抑制圧力が高まる中でも、患者に支持され、売り上げを伸ばす地道な努力をする一方で、患者の薬を1カ所の薬局でまとめて管理する「かかりつけ薬局」の推進など、国の制度的な動きにも対応する「高度な経営力が求められている」と語る。
同社は、M&Aの相手を慎重に見極めながら、制度の影響が大きい大病院前の門前型薬局偏重の店舗ポートフォリオを多様化するためにもM&Aを活用。
また、名門薬局を傘下に収めて人事交流を進め、そのブランド価値の効果創出にも取り組む。薬局機能強化、医療サービスの質向上から業容拡大につなげる「ポジティブ・スパイラルを回すことが大事」と言う三津原氏は「質の高い薬剤師の採用、教育投資に重点を置いてきた」と振り返り、「厳しい環境の中でも、伸びている企業はある。環境変化は大きなチャンスでもある」と前向きに捉えた。
要点解説
成功するM&Aのポイント
金田 和也氏
和久田 敏弘氏
石塚 辰八氏
最後に、ストライク社が、M&Aを検討する際のポイントをまとめた。
譲渡(売却)側は、収益が企業価値のカギなので、損益計算書の強化、財務諸表の透明性確保を意識する必要がある。経営に関与していなかった遺族に自社株を残しても、扱いに困りがち。今は金融緩和により資金調達も含めたM&Aの環境は良好なので「譲渡を考えた時が売り時と言える」と検討着手を促した。交渉段階では、マイナス点を隠さず、早めに相手に伝える方が得策と指摘した。
譲受(買収)側は、M&Aのビジョンを明確にして取り組み、重要局面ではトップが直接出馬することで、相手も安心でき、交渉しやすくなる。同社は、国内7拠点が全国をカバー。インターネットM&A仲介プラットフォームも国内で初めて導入した。ただ「ネットはきっかけづくり。会社は人でできている」と強調。「人が関与することで良い巡り会いを演出できる」と、M&Aを検討している企業に同社への相談を呼びかけた。