市場に先駆け、テンバガーを見つける眼力 唯一無二のストックピッカーと呼ばれる理由
ティリングハスト氏はコスモス薬品以外にも、日本企業の中小型株に数多く投資を行い、高い成果を上げている。同氏がポートフォリオ・マネージャーを務める「フィデリティ・ロープライス・ストック・ファンド」(Low Priced-Stock Fund:以下LPSF)」は1989年以来30年以上もの間、ベンチマークを大幅に上回るパフォーマンスを続け、この間のリターンは約43倍※3に達した。
「伝説の投資家」との出会い
LPSFの高い運用実績などにより、世界トップクラスのポートフォリオ・マネージャーとして知られるようになったティリングハスト氏だが、その転機を本人は「ピーターとの出会い」と振り返る。
ピーターとは“伝説の投資家”と呼ばれるピーター・リンチ氏。米フィデリティで1977年より13年間担当した「マゼラン・ファンド」は、米株式市場が長く低迷する間に年率約30%上昇という驚異的な運用成績を残した。ティリングハスト氏はリンチ氏の愛(まな)弟子にあたり、同氏からさまざまな薫陶を受けた。
「ピーターからの学びの1つに、会社を選ぶときは経営陣との対話が大切だ、というものがあります。どんな強みを持ち、他社とはどんな違いがあるのか。ほかとは違った優れた方針を持っていることがわかって初めて、投資をするのです」
一方、師のリンチ氏は、弟子をこのように評している。
「ティリングハストとほかのプロ投資家とを分かつ素養は、ほとんど誰も気づかないような価値を見いだす能力である。(中略)ティリングハストはまた、価格が急騰する前に長期的な成長株を見いだす、一貫した能力を示してきた」(『ティリングハストの株式投資の原則』(パン・ローリング社)序文より)
とはいえ、ティリングハスト氏は1人でなんでもできるスーパーマンではない。本人は「投資先の選定は、私1人で到底できるものではなく、フィデリティのリサーチチームやほかのポートフォリオ・マネージャーとの連携が必須です」と語る。
サミュエル・シャモヴィッツ氏もその1人。2007年にフィデリティ・インベスメンツに入社後、11年以上にわたり、ポートフォリオ・マネージャーとして東京を拠点にグローバルで幅広いセクターの運用に従事してきた。ジョエルと同じLPSFの運用チームの一員でもある。シャモヴィッツ氏は投資先の「本源的価値」を見極めることが重要だと解説する。