「頼れるリーダー」がチームをダメにする理由 変化の時代には「一緒に成長する」ことが大事

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仲山氏は著書『今いるメンバーで「大金星」を挙げるチームの法則ー「ジャイアントキリング」の流儀』(講談社)の中で、人気サッカー漫画から学ぶチームづくりを解説している

では、チームを運営するにあたって、リーダーがすべきことは何なのであろうか。

「プロジェクトのメンバーが集められたばかりの時点では、お互いのこともこれから何をすることになるのかもわからないため、思ったことがあっても空気を読んで遠慮しがちになります。ここでリーダーが正解を示しつつ一致団結を唱えると、メンバーは本音をのみ込んだまま指示命令に従い、自分だけはミスをしないように頑張るのが仕事になります。

メンバーが本音を言えるようになるためには、相互理解を進めて、『ここまでだったら言っても大丈夫』というラインが見えることがカギになります。いわゆる『心理的安全性』の確立です。それによって、各メンバーが本音を場に出せるようになると、バッティングするアイデアが出てきます。その対立を解消すべくリーダーが仲裁に入ってしまうと、カオスが生まれません。対立が生じて一時的に混乱に陥ったとしても、リーダーは一度コントロールを手放し、試行錯誤の中から成功体験を共有する体験が生まれるように支援します。その意味では、リーダー自身も正解がわからないような未知のお題に挑戦することが重要です。

カオスを乗り越えるためにリーダーがすべきことは、メンバーが本音を言いやすい環境をつくることのほか、ビジョンや目的を示しつつカオスを乗り越える意義を共有すること、一時的にパフォーマンスが下がってもゲームオーバーにならないようチームの安全を確保することです。それを乗り越えたときに、各人の強みを生かした役割分担が生まれてメンバーの『自分ごと化』が進むとともに、高い成果が出せるようになり、チームとしての一体感が醸成されます」

一見、カリスマ的な「頼れるリーダー像」とは真逆の「一緒に考えるリーダー」こそが、チームを成長させるのだ。先頭に立ってみんなを引っ張っていく「頼れるリーダー」自身が過去の成功体験に基づく「正解」を持っており、その賞味期限が切れていたとしたら、その組織が成果を生み出すことはできない。

プロジェクトは「走りながら進める」時代へ

社会の要請という文脈から見ても、新しいチームづくりが重要な意味を持ってくる。働き方改革が進められる中で、今後は時短勤務や在宅勤務など多様な働き方をする人が増えていくだろう。さらに、副業が普及すれば、社外のさまざまなパートナーと一緒に仕事をする機会も一般的になるだろう。

仲山氏はさらに組織形態についてもアドバイスをする。「大企業の中には、効率化のための分業化が進んだため、お客さんと接することのない部署にいる人も少なくありません。それでは『お客さんとともに試行錯誤しながら価値をアップデートしていく』というスタイルが取れません。少人数で最初から最後まで全部やるといったチームをつくるのも大事なポイントの1つです」

仲山氏が支援したある企業では、チームの一人ひとりがアイデアを出し合い、業務の流れや無駄な業務を見直した結果、4時間かかっていた作業が1時間半に短縮され、かつ収益の向上にもつながったという。

「変化が激しい時代には、『これが正解』というものがない場合も多くなります。であれば、比較的少人数の『アジャイル』型チームが走りながら小さな混乱を繰り返し、メンバー同士の相互作用の中で会社、あるいはリーダーが想像もしていなかったアイデアやプロジェクトの進め方が生まれていく──、そんな働き方が今後、日本の大企業で求められていくと考えています。そのためには、チーム全体がビジョンや価値観を共有することが不可欠です。その点では、経営トップがブレない世界観を掲げていることも大切です」

何が起こるかわからない時代、走り出す前に計画を練り過ぎていたら、どんどん変化に置いていかれてしまう。求められるのは、走りながら一体となって成長していくことのできるチームでありリーダーであるといえるだろう。