「運ぶ」に加えられた、FedExの強さの根源 中小企業の貿易支援や高度な「検体」輸送も

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「とくにここ数年の間に、中小企業のビジネスを理解した営業担当者を増員させたほか、迅速に輸送費の見積もりを提出できるサービスデスクを設置しました。また海外への商品発送に必要な梱包や書類作成の代行などの付加価値サポートも充実しておりますし、商材を輸入するお客様には、日本への輸入通関手続きに関するセミナーを随時開催しています」

時代の変化に合わせた体制づくりを可能にしているのは、多様化するニーズをつねに先読みする企業姿勢だ。その中でも、「輸送ネットワークの最適化」と「スムーズな通関手続き」という顕著な2つの取り組みがある。

「国際輸送の物量やニーズは、経済動向によって刻々と変化しているため、フライトルートや輸送関連施設、車両などを含む輸送ネットワークの最適化をつねに行っています」と氏家氏。例えば製造業では、生産拠点や調達先が変更されることがある。また、越境ECではこれまで取引が無かった国からオーダーが入ることがある。「最適化されたフェデックスの輸送ネットワークはそのような際に力を発揮して、ビジネスにおける選択肢を増やすのです」(氏家氏)。

ネットとスマホの普及により、世界中から注文が入る

国際輸送で必ず必要になる通関手続きでは、2013年に東京税関からドアツードアの物流事業者として初めてAEO通関業者に認定されている。AEO=Authorized Economic Operator、つまり貨物のセキュリティー管理やコンプライアンス体制が整備された企業として認められ、通関手続きでの書類審査および検査の一部が省略されたのだ。これは円滑な手続きへのアドバンテージとなる。

ヘルスケア分野で世界的な存在感

フェデックスが現在とくに注力するのが、ヘルスケア産業でのビジネスだ。世界的にも成長への期待が高い分野であり、日本では政府も国際展開を支援している。新薬を早期に世界中で使用できるようにする目的で、日本でも複数の国や地域で同時に臨床試験を行う「国際共同治験」に参加するケースが増加。採血した血液などの臨床検体は、海外の検査機関に集められて検査される傾向にあるため国際輸送ニーズが高まっている。とはいえ、臨床検体の国際輸送は簡単ではない。適切な温度管理を行ったうえで、高水準の輸送品質管理が必要だ。その分野に通じた人材も配置しなければならない。

製薬業界では、医薬品の適正流通基準となる日本版GDP(Good Distribution Practice)ガイドラインが発効されたが、フェデックスはこの要件にあったソリューションが提供できる

フェデックスは30年以上前から世界1万1000社以上のヘルスケア企業に輸送サービスを提供してきたため、輸送の過程で温度管理ができる、コールドチェーン輸送システムを備えている。2017年6月には、24時間以内に日本からシンガポールまで検体を輸送できるサービスを開始した。

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