「運ぶ」に加えられた、FedExの強さの根源 中小企業の貿易支援や高度な「検体」輸送も
費用を払えば当然のように指定した場所へと荷物を運んでくれる物流サービス。社会に欠かせない重要なインフラだが、信頼のおける輸送網を世界中に築くのは容易ではない。顧客からの依頼は、企業の機密情報が詰まった試作品や工業製品、温度管理が必要な医薬品や検体、食品、動物まで多岐にわたり、輸送には知見とノウハウが必要とされる。220以上の国と地域で国際輸送サービスを展開するフェデックスに迫る。
スタートアップ企業支援に見る理念
米フェデックス コーポレーション傘下のフェデックス エクスプレス(以下、フェデックス)は、現在「フェデックス・スモール・ビジネス・アイデア・コンテスト」と銘打ったビジネスコンテストを日本で初めて開催している(エントリーは終了しました)。対象は「6カ月以上継続的に運営されている」中小企業、つまりスタートアップ企業を応援する企画だ。フェデックスが、なぜスタートアップ支援に乗り出しているのか。北太平洋地区担当副社長の氏家正道氏は、次のように説明する。
「フェデックスは、人や組織が世界とつながることでさまざまな機会が生まれると考えています。革新的なアイデアを持つ起業家の方々によるビジネスの拡大を応援しようというのが、このビジネスコンテストの目的です。私たちは以前から中小企業の貿易のサポートに力を注いできました」
このタイミングで日本での初開催を決めたのは、中小企業が海外展開しやすい越境EC市場が世界全体で伸びていることも影響している。「海外展開はもはや大企業だけのものではない」と氏家氏。
「訪日外国人数は毎年のように史上最高を記録していますし、日本製品の良さに触れてSNSで発信される方や、帰国後に越境ECで購入する方が増えることも予想されます。日本でも、ユニークな商品で海外にビジネスを拡大する中小EC事業者が増えてきました。日本製品は私たちが考える以上に多くの国と地域で好まれていますので、フェデックスは海外輸送のサポートを通じて日本の良さを広めていきたいと考えています」
さらに、国内向けECを活用して海外から輸入した製品を販売する中小企業も増えてきた。「日本への輸入では輸送料金体系を見直しました。利便性を高めるため、日本側で輸入に必要な書類を作成したり、オンラインで海外での集荷を手配したりできるツールを提供しています。とくにヨーロッパからの輸入を行うお客様には、お役に立つ機会が多いと思います」(氏家氏)。
一方、中小企業には貿易の専門部署がない、あるいは知識がある担当者がいないケースも多い。言語や為替リスク、通関手続き、商習慣の違いなど、いざ越境ECに踏み出そうとすると、さまざまな問題が押し寄せてくるのが現実だ。フェデックスはそうした課題解決を支援できる体制づくりを着々と進めてきたと氏家氏は話す。