上場インフラファンドが今注目を集める理由 安定した収益が期待できるワケとは?
三井住友トラスト基礎研究所 風岡 茜氏(以下、風岡)2019年2月にエネクス・インフラ投資法人が上場し、東証に上場しているインフラファンドは6銘柄となりました。現状はいずれも太陽光発電施設を投資対象としていますが、風力、水力、バイオマスなどの再生可能エネルギー、さらには、道路や空港などのインフラ全般への拡大も期待されています。
インフラファンドの魅力の1つは比較的安定した高い配当利回りが期待できることです。それを支えているのが、国の2つの制度で、1つは売電開始から20年続く「再生可能エネルギーの固定価格買取(FIT)制度」、もう1つが、再エネ施設の最初の貸出日から20年間、実質的に法人税を課税しない「ペイスルー課税」です。
誤解している人が多いのですが、FITによる買取価格は毎年、徐々に下がっているものの、すでに保有している物件は原則売電開始当時の買取価格が20年間固定されます。つまり、将来にわたって、安定的な収益が期待できるわけです。
今日は6銘柄のうち3銘柄の運用会社の皆さんに来ていただきました。最初に各インフラファンド(投資法人)の特徴を紹介してください。
カナディアン・ソーラー・アセットマネジメント 石山貴子氏(以下、石山)当投資法人は、17年10月30日に最大規模のインフラファンドとして上場しました。さらに18年9月に増資を行い、18物件、約470億円の資産規模へと拡大しています。
当投資法人のスポンサーであり、世界20カ国で太陽光ビジネスを行っているカナディアン・ソーラー・グループは、太陽光パネルの製造・販売、発電設備の開発およびその施設の管理・運用機能を一貫して有し、日本では数少ない垂直型統合モデルを採用している太陽光事業のエキスパートだと自負しています。国内の上場インフラファンドとしては唯一、グローバルオファリング(海外市場での同時募集・売り出し)を実施しており、海外の機関投資家様にも高く評価いただいています。
東京インフラアセットマネジメント 千本順子氏(以下、千本)当投資法人の特徴の1つは、スポンサー企業の1社である保険会社のノウハウを生かし、再生可能エネルギー事業上のリスクを多様な保険によりカバーしていることです。太陽光発電施設の場合、日照不足による発電量の減少は費用利益保険(日射量保険)、自然災害による発電設備の損害は損害保険、また、出力抑制により発電した電気を売電できない場合の機会損失は抑制保険によりカバーします。
もう1つの特徴は、再生可能エネルギーに関する豊富な知見を有するスポンサー企業・サポート企業との協力体制です。特に、メインスポンサーのアドバンテックは高い技術力を持ち、全国各地で発電設備の開発実績があります。アドバンテックは発電設備の設計~建設~保守を一貫して行うことができ、同社がこれまで培った運営ノウハウなどを活用できる点は大きな強みです。
エネクス・アセットマネジメント 西郷道俊氏(以下、西郷)当投資法人のメインスポンサーである伊藤忠エネクスはエネルギー専門商社として、エネルギーに関わる商材を総合的に扱っています。その中でも電力に関しては、電源開発から需給管理、販売まで流通経路を一気通貫したモデルを構築しており、電力事業を本業として営んでいる経験が土台にあります。またその他のスポンサーである三井住友信託銀行とマーキュリアインベストメントには高度な金融機能とREIT運営実績があり、マイオーラ・アセットマネジメントは、海外でも多くの太陽光発電施設の開発実績があります。伊藤忠エネクスはすでに風力や水力の発電施設を保有し、運営ノウハウも蓄積しています。将来のパイプライン(組入候補)に風力や水力が入っていることで、今後インフラファンドとしての新たな分野を切り開くとともに、新たな投資機会を提供できると考えています。
※所属・肩書は取材当時のものです