日本経済に必要なのはTURNという価値観 アートを通じて「多様性への感性」を磨く

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個人や社会のOSを書き換える必要がある

この議論を受けて、「TURN」のプロジェクトディレクターであるアーツカウンシル東京の森司氏は次のように語ってくれた。

「多くの人にとって、今回のトークセッションでカルチャーショックを受けられたと思います。それこそが狙いです。お互いに知らない価値観をぶつけ合い、そこをスタートにするのが『TURN』というプロジェクトなのですから。今の日本はハイブリッドの時代だと思っています。いろいろなものが混在したマーブルのような状況であり、そこには新しい価値観が必要になってきます。20人に1人の割合でLGBTの方がいて、高齢者の比率は3人に1人に近づこうとしています。外を見れば、経済的な理由で、労働力としての外国人が入ってきます。ですが、彼らを生活人としてみると、自らのカルチャーを持っています。違う言語文化の人たちに『僕たちのカルチャーはこうです』と主張するだけでは理解し合えません。そこを、どうやって折り合いをつけるか。"異なる価値観"との接触が当たり前にある変革期だからこそ、個人のそして社会の OS(オペレーティングシステム)自体を書き換えなければいけないタイミングなのだろうと思います」

日比野克彦氏が行った「どこよりも遠かったところ」

日比野克彦(ひびのかつひこ)
1959年岐阜県生まれ。アーティスト、東京藝術大学芸術学部長、岐阜県美術館館長を務めるなど多方面で活躍している。2015年より「TURN」の監修を務める。

「TURN」は障がいの有無、世代、性、国籍、住環境といった属性や背景の違いを乗り越えて、多様な人々との出会いによる相互作用を表現として生み出すプロジェクトだ。アートを作ることを目的にするのではなく、一人ひとりが"その人らしく"生きることを尊重し、日本における新しいダイバーシティの実践の場として国内外に発信を続けている。2015年から「TURN」の監修を務める日比野克彦氏も、この活動にコミットするようになったきっかけを振り返ってこう語る。

「障がい者福祉施設の人たちの作った作品を展示する企画展を監修したことがきっかけでした。ならば、作り手たちの生活を体験してみようと。たとえば未踏の国でも旅行をすることは想像がつきます。レストラン、交通機関に宿があって……といったように。でも障がい者福祉施設での生活は想像がつかず、行ったことのあるどんな海外よりも遠いところ、というイメージだったのです」

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