花王、紙おむつ「メリーズ」急失速の複雑背景 競合のユニ・チャームと明暗が分かれた理由
そこで花王は2つの矢を放つ。1つは、中国向けに新技術を先出しするということ。海外の母親が紙オムツに求めるニーズは、日本人の母親とやや異なる。例えば、中国では紙おむつが直接肌に触れるのを嫌い、おむつ自体をはかせない母親もいる。そこで求められるのが、通気性のよい紙おむつ。花王は技術の詳細を明らかにしていないが、こういった現地の需要に合致した製品を開発するために、新技術を投入していく。
またもう1つの矢が、メリーズのラインナップの拡張だ。今までメリーズはプレミアム製品として売っていたが、より価格帯の高いハイプレミアム製品をラインナップにそろえる予定。「現地企業が作る紙おむつでも、メリーズの1.5倍の価格をつける製品も登場している。われわれは、もう一段差別化していきたい」と、澤田社長は強調する。花王は新技術を生かしたハイプレミアムの新製品を年内に販売する計画だ。
ユニ・チャームの影響は軽微
一方で、競合のユニ・チャームは2月14日に2018年12月期決算(国際会計基準)を発表。売上高6882億円(前期比7.3%増)、コア営業利益951億円(同9.5%増)と、従来の会社計画を上回る着地となった。ユニ・チャームにおいて、子ども用紙おむつはパーソナルケア事業の売上高5992億円のうち約4割を占めるとみられ、こちらも同社を代表する主力製品である。
花王の紙おむつはソーシャルバイヤーの注目の的であるため、規制強化の影響が直撃したが、比較すると現地での人気が劣るユニ・チャームの製品には影響がなかった。
今後の販売強化に向け、ユニ・チャームはメード・イン・チャイナ(現地生産)の高価格帯紙おむつを年内に投入予定。かつて、ユニ・チャームは生産コストが安い中国製の中・低価格帯製品を展開していたが、日本製で安全・安心を訴求した花王の攻勢に押され、顧客を奪われてしまった。
今、中国ではユニ・チャームのハイプレミアム製品「ナチュラルムーニー」が受け入れられている。日本ブランドであることが浸透しているため、中国製でも勝負できるという算段だ。
花王の澤田社長は、「メリーズは以前、おむつ界の『エルメス』と言われていた。最近はそこまで評価してもらえていない。世界最高品質の製品として認めてもらいたい」と語る。とはいえ、ライバルが販売拡大策に乗り出していることもあり、成長路線に戻すのは容易ではない。今期はメリーズ、そして花王にとって勝負の1年になりそうだ。
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