※2005年「その他の雑酒②」、2006年~2018年「その他の醸造酒(発泡性)①」課税出荷数量による。

明るく元気なキャラクターが支持され、No.1へ!
「のどごし<生>」が発売と同時に高い支持を集めた要因に、当時の時代背景と、それを踏まえた“キャラクター設定”が挙げられる。キリンビールの山岸納ブランドマネージャーに当初の狙いを聞いた。
「発売開始当時の2005年は、バブル崩壊後の“失われた10年”の影響が色濃く残り、世の中から少し活気がなくなっていたんです。そんな中で『のどごし<生>』は、『財布の具合は厳しいけど、やっぱり居酒屋で飲むあのおいしい生ビールを家で手軽に楽しみたいよね』といったお客様の期待に応えるべく発売されました。そこには『元気でおいしい商品で、お客様の日常を明るくしたい』という思いが込められていました。そこでコンセプトに設定したのが、『ゴクゴク飲める爽快なおいしさ』というものです。もともとキリンには、一番搾りやキリンラガー、淡麗などの正統派なイメージの製品が多かったので、のどごし<生>のカジュアルで親しみやすいキャラクターがより際立ったんです」
そこに、当時新しくて革新的であった、一目でビール類だとわかる全面にシズルをあしらったパッケージや、元気で明るいイメージのCMなど、商品コンセプトをわかりやすくダイレクトに表現したプロモーションが大きく後押ししたということだ。
そしてもう1つ、大きなベースとなっているのが、キリンビールが持つ技術力の高さだという。
「そもそもこのジャンルの商品は、手頃な価格で楽しんでもらうために、酒税法上の制約を踏まえたうえでビールに近いおいしさを追求するというのが大前提にあります。ですから、実は技術的にかなり難しいことをやっています。技術部門の相当な努力により、コンセプトを体現する味わいが実現できているんです」(山岸氏)
※1 2005年「その他の雑酒②」、2006年~2018年「その他の醸造酒(発泡性)①」課税出荷数量による

こうして時代性と、際立ったキャラクター、そしてキリンの高い技術力を背景に、発売後すぐに爆発的ヒットとなり、売り上げトップに立った「のどごし<生>」(※2)。以降、その首位の座を14年間一度も明け渡していないというから驚きだ(※1)。
※1 2005年「その他の雑酒②」、2006年~2018年「その他の醸造酒(発泡性)①」課税出荷数量による
※2 2005年「その他の雑酒②」課税出荷数量による
発売以来、進化し続ける味
とはいえ当然、市場にはライバル商品も次々登場する。並の努力だけでは、首位の座に居続けるのは難しいのでないか。はたして「のどごし<生>」は14年連続トップをどう実現したのか(※1)。結論からいうと、それは「変わり続けること」だったという。山岸氏からは、驚きの数字が明かされた。
「実は14年の間に、商品リニューアルを計10回も行っています。14年間で10回なので、毎年に近い感覚です」(山岸氏)
10回のリニューアルは、大別すると3つのフェーズに分かれる。1つ目は、生産の安定を主な目的としたリニューアルだ。これまでにない新しい技術を使った商品だけに、初期の頃は、大きく伸びる需要に対して品質や供給量を安定させるべく、発売した後にも改良を重ねた。
2つ目のフェーズが、クセを減らすための改良だ。当時はよく、発泡酒や新ジャンルの商品には、後味に特有のクセがあるといわれていた。それを払拭するためのリニューアルというわけだ。
そして3つ目のフェーズが、さらに技術を一段上げ、よりビールらしい味を徹底追求するための改良。2017年と18年に行ったリニューアルがこれに当たるという。
では、こうした3フェーズ・計10回にわたるリニューアルにより、実際に味はどの程度変わったのだろう。05年の発売初期の商品と、いま現在の商品では、どのくらい味が違うのか。
「もはや別物というくらいに進化しています。もちろん、その時々のベストの味を追求していますが、今の味を知っている方は、発売当初の味はまったく別の物に感じるのではないでしょうか」(山岸氏)
とりわけ大きなリニューアルとなったのが、直近の18年6月に行われたものだ。
「このリニューアルに当たり、改めてお客様が『のどごし<生>』というブランドに求めるものを徹底的に突き詰めました。その結果、ブランドとして追求するべきはやはり、『ゴクゴク飲める爽快なおいしさ』と、『明るく元気なブランド』の部分だという方針が固まりました。
実はこうしたブランドの軸がグラついた時期もあったのですが、その時期を経たからこそ、結果的に当商品の本質的な部分への意識が高まりました。発売当初からあった軸が、より固く太い“背骨”になったイメージです」(山岸氏)

リニューアルに当たっては、何度も販売戦略を見直し、顧客の声にも何度も耳を傾け、さらにはビールを改良するためのテスト醸造である「試醸」を約100回も行った。メーカー側の独り善がりではなく、追求したのはあくまで顧客目線での商品改良だった。
変わらぬ価値を保つには、変わり続けること
こうして、キリンでは同商品の本質的な魅力を磨き上げることに成功した。まず味の面では、キレの良さと、後味のスッキリさをより追求した。パッケージは、今まで円形の中に収まっていた麒麟マークが勢いよくはみ出たデザインを採用。「ゴクゴク爽快!」の文字も加えた。またCMでは、明るく元気なイメージの代表ともいえる、タレントの桐谷健太さんをメインキャラクターに起用し、「世の中を元気にしたい」というブランドの原点に立ち返った。
「初期の頃に商品を飲んでみて味が合わず、それ以来ずっと飲んでいないというお客様もいらっしゃいました。そこから、技術力も飛躍的に進化し、18年のリニューアルでは『新しくなったので、もう一度飲んでみてください』という思いを込めて、リニューアルしたことをシンプルに伝えました。実際にお客様から『久々に飲んでみたら、ずいぶん味が変わっておいしくなったね』という声をいただいた時は、本当にうれしかったですね」(山岸氏)
マーケティング本部マーケティング部ビール類カテゴリー戦略担当
ブランドマネージャー
山岸納氏
ある時点でナンバーワンだとしても、消費者に同じ価値を継続して提供し続けるには、「現状維持したい」という甘い認識を払拭しなければならない。時代によって求められるものは変わり、ライバルの状況や原材料の質・価格など取り巻く環境も刻々と変わっていくからだ。そこで、トップに立ち続けるために、むしろ積極的に変わり続けてきた「のどごし<生>」。今後ますます競争が激化していく中、やみくもに変わっていくのではなく、元々あるブランドのアイデンティティーを研ぎ澄ませることで進化を続ける「のどごし<生>」から目が離せない。