あの大企業が「茨城県」に向ける熱視線 AI、IoT、ロボット…最新技術が勢ぞろい
研究所・本社機能を茨城に移転する企業が増加
日立オートモティブ電動機システムズは2018年8月、電気自動車(EV)などの電動車両モーターの性能向上を目的として、茨城県ひたちなか市に研究開発拠点を新設すると発表した。稼働は19年4月の予定で、19年度には同市で生産も開始する計画だ。同社は17年7月に設立され、本社もひたちなか市に置かれている。
同社以外にも茨城県に研究所・本社機能を移転する企業が増えてきている。大手化学メーカー・クレハの子会社で高機能プラスチック素材を開発、製造、販売するクレハエクストロンは18年5月、都内大田区に所在する本社・工場機能を、茨城県かすみがうら市に全面移転すると発表した。19年10月から稼働する見込みだ。将来の業容の拡大を見込んで敷地の拡張が可能であることも移転の理由の一つだという。
タキロンシーアイの子会社でプラスチック製品の開発・製造・販売を手がけるダイプラ(大日本プラスチックスから社名変更)も、20年6月の稼働を目指して、現在千葉県松戸市にある工場および研究開発機能をかすみがうら市に移転する計画だ。
外資系企業も茨城県に注目している。スウェーデンに本社を置く自動車用安全部品メーカーの世界大手、オートリブの日本法人は19年2月に茨城県つくば市に新たな研究開発拠点「ジャパンテクニカルセンターつくば」を新設する。自動運転など次世代自動車に要求される安全性の高いエアバッグ、シートベルト、ハンドルなどの最先端開発拠点をここに集約する計画だ。
1社あたり最大50億円 国内屈指の補助制度
茨城県に研究所や本社機能を移転する企業が増えている理由はどこにあるのか。特色の一つに手厚い補助が挙げられるだろう。
茨城県は18年度に「本社機能移転強化促進補助事業」を新設した。先に紹介した4社はいずれも移転立地にあたり、同事業の計画認定を受けたものだ。同事業は、AIやIoT、ロボット、次世代自動車など新たな成長分野の企業の研究所や本社機能の県外からの移転が対象だ。
茨城県の企業誘致・
本社機能移転への取り組み
本県が今後も活力を維持・向上させていくためには新たな産業の創出が不可欠でございますことから、AI、IoT、ロボット、次世代自動車といった新たな成長分野の本社や研究施設などの誘致を進めております。今年度は、新たに創設した一社あたり最大50億円となる全国トップクラスの補助制度の効果等もあり、現在まで多くの企業に本県への立地を決めていただくことができました。
大井川 和彦
また、本県は圏央道等の高速道路、港湾、空港が整備され、優れた事業環境を有していることから、県内外の多くの企業に生産拠点として本県を選んでいただいております。
今後も、多くの企業から本県を選んでいただけるよう、更なる事業環境の向上に努めるとともに、本県独自の優遇措置について積極的にPRしてまいります。
本県での新たなビジネス・事業展開を心よりお待ちしております。
注目すべきは、「1社当たり最大50億円」という、全国でもトップクラスの補助率・補助上限額だ。補助の対象となる経費は、施設設備投資、雇用、賃借料など。補助要件は、移転人数5人(研究所は10人)以上となっており、対象エリアは県内全域。補助率は、施設整備投資の10%としているが、成長分野として顕著なものは15%、その中でも世界をリードする高いシェアを誇る企業の場合はさらに加算され、最大で施設設備投資額の30%の補助も可能だという。