「デジタル化」グローバルで進める日産の本気 大企業の鈍重な開発体制を変えた手法とは?

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

利用申請のハードルも下げた。それまでは申請から利用開始までに約2~3週間かかっていたが、承認プロセスを自動化することで、申請から20分で利用できるようにした。こうした取り組みの甲斐あって、登録プロジェクト数は徐々に増加。導入時、「Jira Software」に登録されたプロジェクト数は79だったが、8カ月後は196に倍増した。

導入の効果はさっそく表れている。バグなどの課題が表出してから完了するまで、従来は平均10.3日要していたが、導入後は4.2日に短縮。保田氏は「『Jira Software』は、課題に誰がアサインされていて、今どのような状況なのか一目でわかる。いい意味のプレッシャーになるので、課題が放置される時間がなくなったのではないか。また、『Confluence』の活用により、効率的な情報共有を行うことができ、総合的に部門の生産性が上がっている」と分析する。

もともとの狙いだった自動化(CI/CD)はどうなったのか。CI/CDツール「Bamboo」への登録プロジェクト数は、導入8カ月で96に達した。テストやデプロイが自動化された効果で、それまでテストに要していた時間が、手作業で行っていた頃の12時間から30分に短縮。デプロイに至っては3日から10分へと劇的に短縮された。また、作業環境もモバイルやチャットツールによってリモートでのチェックが可能になり、負荷が激減。アジャイル開発環境を整えるという当初の目的は見事に実現されたようだ。

「アトラシアン・ネイティブを育てていく」

日産のNISSAN Digital部門は、今後も脱ウォーターフォールを進めていく予定だ。保田氏は今後の戦略を次のように明かす。

「現在、部内で内製開発で実施しているプロジェクトは20%。これを50%まで引き上げます。内製化率を高めて自分たちで自由に使えるリソースを持てば、世の中の流れにあったものをさらにタイムリーに作っていけるようになるでしょう」

グローバルでの共通化も着実に進んでいる。同社は2018年12月、インドに「日産デジタルハブ」を設立した。社員550人、ベンダーからの常駐600人、計1150人規模の開発拠点だ。

「デジタルハブのど真ん中にアトラシアンのツールを置いてきました。別のツールから切り替えさせるより、最初からアトラシアンに慣れ親しんだネイティブを育てるほうが、ずっと文化が定着しやすい」

最適化されたツールを駆使したデジタル化を全世界共通で進めることで、作業の無駄をなくし、世の中の変化に近道で対応できる体制を整えていく。今、日産の中で動き出しているデジタル改革が、プロダクトの品質や性能をはじめとしたアウトプットに効果をもたらすまでにそう時間はかからないだろう。今後の展開にさらに期待がかかる。