「デジタル化」グローバルで進める日産の本気 大企業の鈍重な開発体制を変えた手法とは?
変化の流れが早い昨今、企業のシステム開発においても、従来の「ウォーターフォール」型から、小さく作ってフィードバックを得ながら顧客にとって真に価値のある成果物を届ける「アジャイル」型への移行が求められている。日本を代表する自動車メーカーである日産自動車でも、それは例外ではない。同社のシステムを担うNISSAN Digital部門は、3年前にアジリティ(敏捷性)のある開発を目指し、開発と運用が連携する手法である「DevOps(デブオプス)」環境を整えた。その取り組みの背景には、なくてはならないツールの存在があったという。デジタルテクノロジーサービス本部の保田啓氏に話を聞いた。
一度作ったシステムが、改修されることなく5年塩漬け!?
日産の社内では、車両開発、工場の制御系、販売、人事などの業務を支援する無数のシステムが動いている。これらを開発するのが、社内のNISSAN Digital部門だ。グローバル企業だけあってNISSAN Digital部門の規模は大きく、全世界で1280人、日本とアジア(中国除く)だけでも500人を擁している。
ただ、NISSAN Digital部門のプロパー社員はプロジェクトマネージャーとして開発の管理をするのに精いっぱいで、実際のシステム開発はベンダー頼みの状況が続いていた。もちろん外注には外注の利点がある。しかし、保田氏は「近年は弊害がでていた」という。
「システムを改修したくても、外注コストと時間がかかるため、頻繁にできる状況ではなかった。その結果、一度作ったシステムが何も手を加えられることなく5年塩漬けになっていたというケースもあった。新しい技術が次々登場して、市場も目まぐるしく変わっているのに、作ったら作りっぱなしだったのです」