「冬眠人脈」の活用で営業生産性が2.6倍に 働き方改革は、社内で眠る人脈の活用から

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日本の生産性は米国の3分の2程度と言われ、OECD加盟36カ国中20位。主要先進7カ国でみると、最下位という状況※1が長く続く。そのために政府は法律を作って対応し、各企業も多様な取り組みをしているが、とくに「分子=アウトプット」を高めるための取り組みとして、まだできることがある。その1つが「社内の情報資産の活用」だ。

野村総合研究所
上席コンサルタント
コーポレートイノベーションコンサルティング部
ソリューション開発・営業グループ
黒崎浩氏

「今は、多種多様な情報を取得しなければならない時代ですが、一人のスーパーマンがすべてを理解し、対応するということはありえません。ですから、ノウハウ(know how)よりもノウフー(know who)を重視するべきです」(黒崎氏)

ノウフーとは、「誰が何を知っているか」「どこにその分野のエキスパートがいるか」を「知っていること」。わかりやすく言えば、人脈だ。

ノウフーの重要性に早くから気づいていた野村総研には、数十年前からノウフーを共有する仕組みがあるという。同社では顧客の機密を扱うために、具体的な情報については伏せられているものの、社内に蓄積された知見とその持ち主の整理がなされている。この仕組みは、社内の人脈を有機的に活用する手段と言い換えることもできる。

これは、高度な情報が飛び交う総研やコンサル業界固有の事象ではない。Sansanの調査でも、98.2%が「人脈を重要だと考えている」と回答しているように、ビジネスにおいて人脈がとても重要な役割を果たすというのはあらゆる業種で当てはまる。

だからこそ、人脈の活用層と非活用層の生産性に、倍以上の格差が生まれてしまうのだろう。同調査によれば、活用層と非活用層の差は以下のとおりだ。

新規でアポを設定する1カ月当たりの平均件数では「1.6件増(1.1倍)」、新規アポ設定後に受注につながる成約率では「5.5ポイント増(1.3倍)」、1案件当たりの平均受注単価では「約1.5倍」、新規アポ設定後に受注するまでの日数では「5日短縮(0.8倍)」となる。

これらの数字を組み合わせて生産性の指標を出したところ※2、冬眠人脈の活用層のほうが「2.6倍」高いという結果になった。「営業しやすくなった」「新規プロジェクトが始まった」「新たな取引先を紹介してもらえた」といったコメントも多く、「冬眠人脈」が持つポテンシャルの高さがわかる。

一方で、人脈の活用方法にもポイントがあると黒崎氏は語る。

「そもそも、人脈というのは、交換した名刺の情報を共有するだけでは不十分な場合もあります。社外にキーパーソンがいたとして、社内の誰が接触していて、どのような関係を構築しているのか、周辺にどのようなつながりや情報があるかを管理することも重要です」

そうすることで、人脈をより有効に活用できることになるだろう。

※1 出典:日本生産性本部「労働生産性の国際比較2018」

※2 「新規でアポを設定する1カ月当たりの平均件数(1.1倍)」×「新規アポ設定後に受注につながる成約率(1.3倍)」×「1案件当たりの平均受注単価(1.5倍)」÷「新規アポ設定後に受注するまでの日数(0.8倍)」として生産性を算出した

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