激変の時代を勝ち抜く次の一手 サブスクリプション・ビジネス成功のヒント

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Pricing Strategy
成功するサブスクリプションの価格戦略

サイモン・クチャーアンドパートナーズジャパン
代表取締役社長
山城 和人

プライシング領域で評価の高い戦略系コンサル、サイモン・クチャーの山城和人氏は、サブスクリプションビジネスのカギとなる顧客の獲得、収益化、顧客維持の三つのポイントは「トレードオフの関係にあり、同時に達成するのは難しい」という課題を挙げた。そのうえで、顧客の獲得・維持をしながら収益最大化を図るための、パッケージング、プライシングモデル、価格レベルの各施策について説明。パッケージングは、顧客セグメントに応じて複数のプランを用意すべきと強調。一般的なグッド、ベター、ベストの3グレードのプランの場合、支払い意思の高い顧客層に、最も高額のベストのプランを選んでもらえるよう、機能や特徴の差別化を徹底すべきと述べた。

プライシングモデルについては、定額制では顧客側が「サービスを使わずにメリットを受けられないかもしれないというリスクを負担している」として、従量制など、顧客が得た便益に応じて課金するモデルを導入して、企業側がこのリスクをシェアすれば、顧客獲得・維持が向上できる可能性を指摘し、「サブスクリプションビジネス全体は、この方向に向かっている」と述べた。

価格レベルについては「価格は販売数量より、はるかに利益に対する感度が高い。価格レベルを上げれば、販売数量が減っても利益を改善できる可能性が高い」と述べた。ただし、一律値上げではなく、休眠顧客への値上げを避けるなど、誰を対象にどの程度値上げするのか、値上げ理由として、何をどう伝えるのか、顧客ごとに差別化することを求めた。

Finance Strategy
サブスクリプション成功のために
重要なKPI「PADRE」

Zuora Inc.
VP Finance & Strategy
イアイン・ハッサル

Zuoraのイアイン・ハッサル氏は、同社のKPIとオペレーションモデル「PADRE」について説明した。同社のオペレーションは、ARR(年間定期収益)にフォーカス。今期首のARRに、ACV(年間契約価値)を足し、チャーン(解約)で失った価値と固定コストを引いた来期首のARRを算出。今期の収益見込みからビジネス拡大のための投資可能額を高い確度で把握。来期のARRをどれだけ伸ばすか、そのためにいくら投資するか、といった将来像を考えることができる。

PADREは、P(Pipeline)はパイプライン創出、A(Acquire)は新規顧客獲得、D(Deploy)は顧客へのシステム導入、R(Run)は顧客の利用状況把握、E(Expand)はアップセルなど既存顧客へのサービス提供の拡大、という五つの顧客とのかかわりを指す。各ステージでは、組織横断的に顧客にかかわることが必要で、たとえば、拡大ステージでは、顧客のケアを行うカスタマーサクセス、マーケティング、製品・サービス開発、多くの企業でアップセルも担当するようになっているプリセールス・営業が、互いに連携しながら、アップセル、クロスセル、契約更新を推進して、同社収益の約7割を生み出している。

ハッサル氏は「成長には、社内の全部門がサブスクリプションビジネスを理解し、それぞれの部署が担う役割を理解することが重要です」と強調。KPIについては「投資家や社内にビジネス成長を説明するために、ARRをはじめとするサブスクリプションの指標が必要」と語った。