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激変の時代を勝ち抜く次の一手 サブスクリプション・ビジネス成功のヒント

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  • セミナーレポート 制作:東洋経済企画広告制作チーム
デジタル・トランスフォーメーションの進展、デジタル業界からのディスラプター(創造的破壊者)の登場で、従来のモノの売り切り型のビジネスが脅威にさらされるなか、企業は生き残りをかけ、課金型のサブスクリプションビジネスへの取り組みを加速している。今年、3回目を迎えた「Subscribed Tokyo 2018」は、新たなビジネスモデル、サブスクリプションの本質に迫り、その進め方や、導入企業事例が紹介された。
共催:Zuora Japan、東洋経済新報社
協賛:デロイト トーマツ コンサルティング合同会社

オープニングスピーチ

Zuora Japan
代表取締役社長
桑野 順一郎

サブスクリプション・マネジメント・プラットフォームを提供するZuora日本法人の桑野順一郎氏は、グローバル時価総額ランキングトップ10のうち、サブスクリプションビジネスに取り組んでいる企業が7社を占める事実を指摘。「今や、サブスクリプションは企業成長の必須条件」と訴えた。また、同社が、デロイトトーマツコンサルティングと、サブスクリプションモデルによる企業変革推進のコンサルティングで協業を始めたことを紹介。このイベントを通じて「単なる月額課金モデルの延長とは異なるサブスクリプションの本質を理解いただければ」と語った。

Keynote
サブスクリプション・エコノミーで
成し遂げる価値創造と成功の条件

Zuora Inc.
CEO
ティエン・ツォ

Zuoraのティエン・ツォ氏は、20世紀の大量生産・製品販売中心のモデルが転換点を迎えたことを強調。2000年以降「フォーチュン500企業の半数が、ディスラプターにより淘汰された」と振り返った。背景には、顧客期待の変化がある。たとえば、マイカーで移動するとは、所有したモノを使って「成果」を得ることだったが、サービス化の進展に伴って「顧客は、所有せずに、サービスで成果・経験を求めている。一方、サービス提供者はつねに変化する顧客のニーズを把握して、永遠のベータ版としてサービスを陳腐化させずに提供し続ける。これがサブスクリプションエコノミーの本質である」と訴えた。

この動きは、あらゆる業界で見られる。ソフトウエア業界はSaaS化して、顧客は、システムを所有せずに、つねに最新版を利用できるようになった。製造業でも、IoTによるデジタル化が進み、土砂の移動のさせ方をデザインし、用地整備をサービスとして提供する建設機械メーカーも現れた。

「つねに変化する顧客ニーズに対応できない」サイロ化された従来型組織に代わり、サブスクリプションビジネスは、顧客を中心に置き、それを取り巻く、各チャネル、部門、ITシステムが連携しながら永遠のベータ版としてサービスを提供する概念を提唱。価格やパッケージングを柔軟に設定できるメリットを生かすため、自由度の高いITシステムを構築。顧客のさまざまな情報をIDにひも付けて把握し、顧客との間に継続的な関係を構築し、サブスクライバーになってもらう、といったサブスクリプションモデルの重要なポイントを挙げた。

毎期、ゼロから収益を計上する従来型ビジネスと異なり、今ある収益に、増えた契約分を上積みするサブスクリプションビジネスは、業績を伸ばしやすく「成功企業は大幅に成長を加速している実績もある」と述べ、「われわれも、サブスクリプションを支えるシステムを提供して、皆さんを支援していきたい」と話した。

Digital Transformation
サブスクリプションビジネスを始める前に

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
執行役員
Technology Strategy Unit
Systems Integration Service line Leader
根岸 弘光

デロイトトーマツコンサルティングの根岸弘光氏は、国内でサブスクリプションビジネスを始めた企業が、まだ定額課金の域を出ていない現状を指摘。[単価×期間]が売り上げになるので「期間を伸ばすため、顧客のリテンション、長期的関係の構築・強化が重要」と述べた。そのうえで、今ある顧客ニーズをとらえるためにサービスを市場投入するまでの時間を短縮すること、顧客動向を分析して、効果的なクロスセル・アップセル、解約率を下げるための積極的なデータ活用。パッケージングや価格の設定を柔軟に変更できるシステムを整えること、の三つをポイントに挙げた。

具体的な取り組みとしては、ターゲット顧客へのアプローチの仕方や、最適な商品・サービスの提供チャネルなどに関する戦略を策定。サブスクリプションビジネスの推進に対する社内合意の獲得。Zuoraなどサブスクリプションビジネスの基盤と、既存のCRM、ERPシステムとのデータ連携。定額や従量など多様な選択肢の中から顧客の期待に合わせた課金モデルの検討を挙げて、「当然に必要なことを地道に行うことが大切」と訴え、同社が策定した「サブスクリプションビジネスを成功させるためのフレームワーク」の活用も促した。

迅速に意思決定できる組織にするため、人は、顧客分析、価格設定などに集中し、契約や請求などの業務はシステムに任せるべきと主張。「Zuoraを導入するだけではサブスクリプションビジネスは実現できない。ビジネスで何を提供し、どう運用するかを考え、全体像をもってシステムを構築することが必要」と語った。

Japan Customer Story
サブスクリプションビジネスへの挑戦とその成果

アムニモ
代表取締役社長
谷口 功一

サブスクリプションビジネスを推進する2社が実践事例を語った。新たに構築すると多額のコストと期間が必要なIIoT(産業用IoT)の仕組みのサブスクリプションサービスを2019年1月から開始するアムニモの谷口功一氏は「どんなデータを取るべきか、やってみないとわからないIIoTに、中小企業は多額の投資ができないため、利用できないという現状を変えたい」と、狙いを語った。同社は、センサーでデータを取得してから顧客が分析・活用するまでのIIoTの一連の流れのうち、共通化できる、データのデジタル化、暗号化、IoT回線を通じたクラウド送信、データベースへの蓄積の過程をサービスにまとめ、1測定点あたり月1000円のリーズナブルな価格で提供する。課題となるセキュリティも同社が24時間365日監視する体制を整備。Zuoraをバックオフィスに導入したビジネスシステムも構築し、「かなりディスラプティブな仕組みができた」と自信をのぞかせた。

SmartHR
COO(最高執行責任者)
倉橋 隆文

クラウド人事労務ソフトのサブスクリプションビジネスを展開するSmartHRの倉橋隆文氏は、従業員わずか30人だった17年9月にZuora導入を決めた。それまでエクセルで管理していたが、利用者数増加によって追加課金が発生するたびに、手作業で按分計算して入力する必要があり、請求書発行に3日、KPI集計に半日かかり、「ビジネス拡大の肝」となる追加オプションも、バックオフィスの処理能力の限界のために発売できず「Zuoraを導入しなければ成長が止まる恐れがあった」と振り返った。現在、請求書は2時間、KPIはリアルタイム、追加オプションは一つをリリース、四つの新機能が開発中。スピード以外の導入効果として「営業担当が獲得するさまざまな形態の契約をきれいにできたこと」を挙げた。自由度の高いエクセル管理下で変則的な契約が増えると、システム化は難しくなる。「契約管理のシステム化は早くすべきだと思う」と語った。

Pricing Strategy
成功するサブスクリプションの価格戦略

サイモン・クチャーアンドパートナーズジャパン
代表取締役社長
山城 和人

プライシング領域で評価の高い戦略系コンサル、サイモン・クチャーの山城和人氏は、サブスクリプションビジネスのカギとなる顧客の獲得、収益化、顧客維持の三つのポイントは「トレードオフの関係にあり、同時に達成するのは難しい」という課題を挙げた。そのうえで、顧客の獲得・維持をしながら収益最大化を図るための、パッケージング、プライシングモデル、価格レベルの各施策について説明。パッケージングは、顧客セグメントに応じて複数のプランを用意すべきと強調。一般的なグッド、ベター、ベストの3グレードのプランの場合、支払い意思の高い顧客層に、最も高額のベストのプランを選んでもらえるよう、機能や特徴の差別化を徹底すべきと述べた。

プライシングモデルについては、定額制では顧客側が「サービスを使わずにメリットを受けられないかもしれないというリスクを負担している」として、従量制など、顧客が得た便益に応じて課金するモデルを導入して、企業側がこのリスクをシェアすれば、顧客獲得・維持が向上できる可能性を指摘し、「サブスクリプションビジネス全体は、この方向に向かっている」と述べた。

価格レベルについては「価格は販売数量より、はるかに利益に対する感度が高い。価格レベルを上げれば、販売数量が減っても利益を改善できる可能性が高い」と述べた。ただし、一律値上げではなく、休眠顧客への値上げを避けるなど、誰を対象にどの程度値上げするのか、値上げ理由として、何をどう伝えるのか、顧客ごとに差別化することを求めた。

Finance Strategy
サブスクリプション成功のために
重要なKPI「PADRE」

Zuora Inc.
VP Finance & Strategy
イアイン・ハッサル

Zuoraのイアイン・ハッサル氏は、同社のKPIとオペレーションモデル「PADRE」について説明した。同社のオペレーションは、ARR(年間定期収益)にフォーカス。今期首のARRに、ACV(年間契約価値)を足し、チャーン(解約)で失った価値と固定コストを引いた来期首のARRを算出。今期の収益見込みからビジネス拡大のための投資可能額を高い確度で把握。来期のARRをどれだけ伸ばすか、そのためにいくら投資するか、といった将来像を考えることができる。

PADREは、P(Pipeline)はパイプライン創出、A(Acquire)は新規顧客獲得、D(Deploy)は顧客へのシステム導入、R(Run)は顧客の利用状況把握、E(Expand)はアップセルなど既存顧客へのサービス提供の拡大、という五つの顧客とのかかわりを指す。各ステージでは、組織横断的に顧客にかかわることが必要で、たとえば、拡大ステージでは、顧客のケアを行うカスタマーサクセス、マーケティング、製品・サービス開発、多くの企業でアップセルも担当するようになっているプリセールス・営業が、互いに連携しながら、アップセル、クロスセル、契約更新を推進して、同社収益の約7割を生み出している。

ハッサル氏は「成長には、社内の全部門がサブスクリプションビジネスを理解し、それぞれの部署が担う役割を理解することが重要です」と強調。KPIについては「投資家や社内にビジネス成長を説明するために、ARRをはじめとするサブスクリプションの指標が必要」と語った。