激変の時代を勝ち抜く次の一手 サブスクリプション・ビジネス成功のヒント
Digital Transformation
サブスクリプションビジネスを始める前に
デロイトトーマツコンサルティングの根岸弘光氏は、国内でサブスクリプションビジネスを始めた企業が、まだ定額課金の域を出ていない現状を指摘。[単価×期間]が売り上げになるので「期間を伸ばすため、顧客のリテンション、長期的関係の構築・強化が重要」と述べた。そのうえで、今ある顧客ニーズをとらえるためにサービスを市場投入するまでの時間を短縮すること、顧客動向を分析して、効果的なクロスセル・アップセル、解約率を下げるための積極的なデータ活用。パッケージングや価格の設定を柔軟に変更できるシステムを整えること、の三つをポイントに挙げた。
具体的な取り組みとしては、ターゲット顧客へのアプローチの仕方や、最適な商品・サービスの提供チャネルなどに関する戦略を策定。サブスクリプションビジネスの推進に対する社内合意の獲得。Zuoraなどサブスクリプションビジネスの基盤と、既存のCRM、ERPシステムとのデータ連携。定額や従量など多様な選択肢の中から顧客の期待に合わせた課金モデルの検討を挙げて、「当然に必要なことを地道に行うことが大切」と訴え、同社が策定した「サブスクリプションビジネスを成功させるためのフレームワーク」の活用も促した。
迅速に意思決定できる組織にするため、人は、顧客分析、価格設定などに集中し、契約や請求などの業務はシステムに任せるべきと主張。「Zuoraを導入するだけではサブスクリプションビジネスは実現できない。ビジネスで何を提供し、どう運用するかを考え、全体像をもってシステムを構築することが必要」と語った。
Japan Customer Story
サブスクリプションビジネスへの挑戦とその成果
サブスクリプションビジネスを推進する2社が実践事例を語った。新たに構築すると多額のコストと期間が必要なIIoT(産業用IoT)の仕組みのサブスクリプションサービスを2019年1月から開始するアムニモの谷口功一氏は「どんなデータを取るべきか、やってみないとわからないIIoTに、中小企業は多額の投資ができないため、利用できないという現状を変えたい」と、狙いを語った。同社は、センサーでデータを取得してから顧客が分析・活用するまでのIIoTの一連の流れのうち、共通化できる、データのデジタル化、暗号化、IoT回線を通じたクラウド送信、データベースへの蓄積の過程をサービスにまとめ、1測定点あたり月1000円のリーズナブルな価格で提供する。課題となるセキュリティも同社が24時間365日監視する体制を整備。Zuoraをバックオフィスに導入したビジネスシステムも構築し、「かなりディスラプティブな仕組みができた」と自信をのぞかせた。
クラウド人事労務ソフトのサブスクリプションビジネスを展開するSmartHRの倉橋隆文氏は、従業員わずか30人だった17年9月にZuora導入を決めた。それまでエクセルで管理していたが、利用者数増加によって追加課金が発生するたびに、手作業で按分計算して入力する必要があり、請求書発行に3日、KPI集計に半日かかり、「ビジネス拡大の肝」となる追加オプションも、バックオフィスの処理能力の限界のために発売できず「Zuoraを導入しなければ成長が止まる恐れがあった」と振り返った。現在、請求書は2時間、KPIはリアルタイム、追加オプションは一つをリリース、四つの新機能が開発中。スピード以外の導入効果として「営業担当が獲得するさまざまな形態の契約をきれいにできたこと」を挙げた。自由度の高いエクセル管理下で変則的な契約が増えると、システム化は難しくなる。「契約管理のシステム化は早くすべきだと思う」と語った。