Crossing for the Next

NTTテクノクロス フェア 2018

テクニカルセッション
次世代AIロボットの最先端動向
-ディープラーニングがロボットを変える、その先にある未来-

早稲田大学 理工学術院
基幹理工学部 表現工学科 教授
産業技術総合研究所
人工知能研究センター
特定フェロー
尾形 哲也氏

早稲田大学の尾形哲也氏は、人の身体能力に当たる、ロボットのハードウェアはかなりの完成度にあり、知能面も「この1~2年で、ディープラーニング(DL)が導入され、実用的なロボットが登場し始めている」と説明した。厳密にはDLは、人間の知的行為を再現するプログラム・機械全般を意味するAIの中の一技術であり、知識を学習させるツールの一つにすぎないが、画像や音声認識でブレークスルーを起こしている。ただ、DLは学習するデータ量や回数がものをいうため、単純な物量勝負では、大手IT企業に勝てない。尾形氏は、AIとロボットの専門家とほとんど交わりがないため、DLをロボットに応用する領域に勝機があるとみて成果を上げてきた。DLを含む機械学習には、結果の成否だけを教えながら膨大なデータを使う「強化学習」と、人が貼ったラベルを使う「教師あり学習」があるが、さらに今ある情報から未来を予測して教師なしで学習する「予測学習」が重要になると考えられている。尾形氏は、タオルを折りたたむロボットに、この予測学習を使い、「今、ロボットが見ている映像が、どう変わるかを予測した映像をつくり出させる」ことで実現。それ以外の作業も学習データを換えることで可能になってきた。日立製作所との共同研究では、ロボットには難しいとされるドア開けの一連の作業も、ドアに近づき、ノブを回し、ドアを開け、通り抜けるという各動作を別々に学習するDLで可能になった。

DLツールはフリーで公開されていて、多くのスタートアップ企業が開発に取り組んでいることに言及した尾形氏は「DLを応用する事例は、これから増えると思う。ロボットを使っている企業には、こうした技術があることを知っていただきたい」と活用を呼びかけた。

スペシャルセッション
AIビジネス最前線!組織・働き方に
どのような影響を与えているか?

働きごこち研究所
代表取締役
ワークスタイルクリエイター
藤野 貴教氏

『2020年人工知能時代 僕たちの幸せな働き方』の著者である、働きごこち研究所の藤野貴教氏は、企業でAI・テクノロジーの活用が進みにくい理由の一つに、技術に詳しい人と、そうでない人の対立構造を挙げた。テクノロジーに詳しくない人に「コンピュータビジョン、DLアルゴリズムなどの専門用語を並べて説明しても引かれてしまう」として、「身体感覚」でテクノロジーを理解してもらい、組織全体のテクノロジーリテラシーを向上させれば、「日々の仕事にテクノロジーをどう生かせるか、を自分ゴトとして考えられるようになる」と述べた。もう一つの問題として「変わりたくない」という感情から来るテクノロジーへの抵抗感に言及。有名なAIキャラクターを知っていても、実際にチャットをした人は少ないとして、テクノロジーで遊んでみることを推奨した。また、テクノロジー活用を推進する過程では、社内の多くの人を巻き込む力が必要になり、それは結果的にリーダー育成につながると指摘。また、自分の仕事をAIに置き換えられる人に対して「存在価値の喪失感、不安を和らげる取り組みは、人にしかできない仕事」と述べた。自身も「田舎の方が幸せに暮らせる」という直感に従って、東京から離れることを決断した藤野氏は、多くの企業は、論理・根拠に過度に依存してしまっている結果、「前例のない新しいチャレンジの意思決定ができない状況に陥っているのではないか」という問題を提起。テクノロジーと共に、人も進化しなければならず、それは直感と論理の双方を尊重する方向にあるという考えを示し、「直感と論理の関係は、唯一の正解があるバランスではなく、人によって異なる感覚に従った『塩梅(あんばい)』だと思う。その塩梅を感じ取ることが人の強みになります」と訴えた。

パネルディスカッション
AI活用の成功のカギとは?
AIを現場に導入するために準備するもの、ことは何か?

NTTテクノクロス
取締役
戦略ビジネス特区長
小師 隆氏
インプレス
編集主幹
田口 潤氏

尾形、藤野両氏とNTTテクノクロスの小師隆取締役の3人がAIの活用について話し合った。

尾形氏は、DLについて「ネットと同じで、初めはなくても済むように思える技術だが、大きな価値を生む可能性がある」と取り組みを促した。これまでの技術に比べてかなり特殊なDLの研究教育の体制は、大学でもまだ整っていないが、公開されたツールは直感的に使え「学生が自学自習で取り組んでいる」と現状を説明。「これからいろいろなものが出てくるでしょう」と語った。

藤野氏は、無人店舗で収集される「商品を手に取ったが戻した」行動データにより、小売りがメーカーに価格変更などを提案できる可能性を示し「想像を広げるリテラシーが必要」と述べた。あわせて、RPA導入で生産性が飛躍的に向上するという考えも「リテラシー不足による過剰期待」として、費用対効果にとらわれず、将来を見据えた取り組みを訴えた。

小師取締役は、コンタクトセンターのオペレーターをAIでリアルタイムに支援したり、バックオフィスの入力やチェック業務を支援するソリューションを紹介。AIの今後について「さまざまなものにAIが組み込まれ、別々の製品に入ったAI同士の連携も生まれるでしょう」と、発展の方向を予想。また、展示に参考出品が多いのは、AIにデータを入れないと価値が実証できないためとして「データを持つ企業のお客様とパートナーを組み、役に立つAIに到達したい」と呼びかけた。

モデレーターのインプレス、田口潤氏は「時代が動き始めている。今こそアクションが必要」とまとめた。

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