Crossing for the Next NTTテクノクロス フェア 2018
主催:NTTテクノクロス
ご挨拶
2017年4月、NTTソフトウェア、NTTアイティと、NTTアドバンステクノロジの一部事業を統合して発足したNTTテクノクロスの串間和彦社長は「当社は『AIファースト』を掲げ、NTTのAI技術ブランド『corevoⓇ』の下で、新たなサービスを生み出しています」と、AI技術に取り組む姿勢を強調した。同社は、顧客のニーズに応えて最適なシステムを構築するSI事業者として『モノづくり』の経験を蓄積してきたが、この数年は、セキュリティ関連やクラウドコミュニケーションツールなど、自社製品開発による『コトづくり』を推進してきた。ここからさらに「人のノウハウや、ビッグデータから得られる知見などを基に『チエづくり』を発展させたい」と述べ、災害備蓄品管理と、賞味期限の近い品の寄付先を探す支援を組み合わせて、社会貢献やフードロス削減を実現した事例を紹介。「SI力と商品競争力を併せ持ったIT企業として成長する」と語った。
「corevo」は日本電信電話株式会社の登録商標です。
基調講演
AIの普及で予測される未来と迫りくる危機
-AIにできること、できないこと-
人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」(東ロボくん)のディレクターを務めた国立情報学研究所教授の新井紀子氏は「人の脳を模したニューラルネットワークに、ビッグデータを入れれば答えが出るようになるわけではない」と述べ、「統計の運命」として正答率を7~8割程度以上にするのは難しいという統計的機械学習を使ったAIの限界を示した。コンピュータで計算可能な統計、論理、確率を使えても「AIは言語の意味を理解しない」と強調。機械翻訳や自然言語処理の精度を画期的に改善した深層学習も「正しさは保証しない」という課題がある。11年から始まった東ロボくんのプロジェクトは、「意味を理解しないままでは、東大に入れる見込みがない」と16年にすべての科目で模試を受験するイベントは一旦凍結したが、センター試験模試で、受験生上位20%、有名私大に入れるレベルにまで成長した。新井氏は「これが、プロジェクトの開始段階から示したかったことでした」と振り返り、AIとの競争に敗れたホワイトカラーを志向するであろう残り8割の受験生の将来に懸念を示した。ここで浮かんだのが「意味を理解しないAIに、意味を理解できるはずの高校生がなぜ負けたのか?」という疑問だった。そこで、教科書から抜き出した文章を使い、AIが苦手とする同義文判定などの問題をつくって、人の基礎的読解力を調査するリーディングスキルテストを実施したところ、中学・高校生の正答率は想像以上に低い結果が出た。新井氏は「教科書が読めなければ、1人で勉強できない。定義文が読めなければプログラマーにはなれない」と指摘。大きな雇用問題を引き起こしかねないAI時代にこそ「教科書を読めるようにすることが義務教育の最重要課題」と訴えた。