「Jira」が世界の先進企業に使われる理由 もはやチームにスーパースターは必要ない

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「オープンで風通しのいい職場は、社員のエンゲージメントにも好影響を与えます。アトラシアンは『働きがいのある会社ランキング』(2014年GPTW調査、中規模部門)でオーストラリア1位になりました。エンゲージメントの高い社員が集まり、個では生み出せない大きな力を発揮していく。それがわが社の強みになっています」

あらゆる産業が“ソフトウエア・ファースト”に

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アトラシアンが提供するプロジェクト管理ツール「Jira Software」の使用画面。チケットで課題の管理が可能

オープンでお互いに助け合う文化は、それを具現化するツールがあってこそ花開く。アトラシアンが開発した「Jira Software」は、まさにチームの生産性を高めるのに最適なプロジェクト管理ツールであり、同社自身も日々発生するタスクや課題の管理に活用している。

「『Jira Software』は、社内外で分散している課題を一元管理します。進捗状況が可視化されているので、『Aさんは手が空いているから、この仕事を頼もう』、『このプロジェクトは滞りがちだから協力を募ろう』といった対応がタイムリーにできる。アジャイル開発には欠かせないツールです」

「Jira Software」がアジャイル開発で大いに力を発揮することは、ソフトウエア企業の間ですでによく知られている。ただ、前述のように、アトラシアン製品のユーザーは「フォーチュン100」の約8割に及び、自動車メーカーや金融など、あらゆる業種に広がっている。ソフトウエア企業以外にも導入されている理由を、ハリントン氏はこう語る。

「まず、いまやあらゆる産業がソフトウエア・ファーストになり、ソフトウエア開発と無縁ではいられなくなったことが大きい。また、課題やタスクが発生するのは、ソフトウエア開発の現場だけではありません。たとえば、サービスデスクに届いた要望への対応など、ビジネス系のコラボレーションでも『Jira』は効果を発揮します」

すべての人類の偉業の背後には、チームの存在がある。我々のミッションは、あらゆるチームの潜在能力を解き放つ――。

ハリントン氏は、アトラシアンの企業ミッションに触れるたび、学生時代のある光景を思い浮かべるという。

「私は大学で計算機の研究をしていました。高性能のCPU1個で計算するのと、通常のCPUを64個並べて計算するのでは、どちらが早く計算できると思いますか。答えは64個のほう。コンピュータもチームで戦ったほうが強いんです」

最後にハリントン氏は、こう語ってくれた。

「強いリーダーがトップダウンで『俺の考えたアイデアは素晴らしいから従え』という時代はもう終わりました。スーパースターは必要ない。チームの力を引き出すには、ツールを導入するだけでなく、トップが『間違ってもいいから提案しよう』というメッセージを出すことが大切です。ボトムアップで次々に声があがる環境が整い、そこにツールが加わったとき、その組織は最高の生産性を発揮するでしょう」

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