「欲しい人材が採用できない…」と嘆く前に デジタル時代の中小企業に訪れる危機と好機

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業種や業界を問わず人材採用が困難になり、人手不足倒産が目立ち始めている。まさに人材の獲得が企業の命運を左右する事態だ。こうした中、大企業に比べて経営資源の劣る中小企業が優秀な人材を確保するためにはどうすればよいのか。シンクタンク・ソフィアバンク代表の藤沢久美氏に聞いた。

経営者が本気で人材獲得に取り組めていない原因

いま、中小企業にとって存続の危機と、大きく飛躍する好機が同時に訪れているという。どういうことか。藤沢代表は次のように語る。

「デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)と言われるデジタル化の進展は、大企業にも中小企業にもいや応なく大きな変化を促しています。企業規模に関係なく自社の強みを生かしてデジタル対応に成功し、ビジネスを適切に変化させた企業は元気になり、そうでない企業は衰退に向かっているのです」

DXによって企業は圧迫される反面、それらがもたらす市場や顧客の変化をつかみ、新たな潮流に対応した企業には、大きな利益を獲得できるチャンスが生まれているというのだ。ITベンチャー企業の隆盛がいい例だろう。

しかし、ここで問題になるのは人材の確保である。有効求人倍率が高止まりし、求職者優位の売り手市場が続く中、経営者が世の中の変化をとらえ、新たな方向性を打ち出したとしても、それを担う優秀な人材を獲得するのは極めて厳しい状況だ。

「ベンチャー企業では優秀な人材が1人入社するだけで大きく成長します。しかし中小企業庁の調査によると、中小企業の採用手段で最も多いのはハローワーク、次いで知人や友人の紹介です。つまり、人材採用のプロが介在していない。理由は費用がかかるからですが、それは本気で優秀な人材の獲得に取り組んでいない現れではないでしょうか」

優秀な人材が欲しくない経営者はどこにもいないだろうが、本気で取り組めていない原因は、経営者がどのように自社を成長させていくかのビジョンを描ききれていないことにある。そのため、どのようなスキルや経験を持った人材が必要なのか、具体的なイメージに落とし込めないのだと藤沢氏は指摘する。

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