なぜ「質の高い人材」を獲得できないのか 採用に強いといわれる企業はここが違う
「優秀な学生は、いわゆる世の中の就職人気企業ランキングとはまったく異なるプロフィールを持った企業を選ぶ傾向にあります。そのため、優秀な人材ほどさまざまなネットメディアから網羅的に情報収集することに熱心になっています。それは自分に合った会社や仕事を探したいという欲求が高まっている証拠でもある。これは過去に例を見ないトレンドだといえます」
変容する検索行動、ストーリーでキャリアを描く求職者
それゆえ、Indeedのような求人検索エンジンでも「検索の仕方がより高度になっている」と高橋氏は指摘する。
「たとえば、検索キーワードでは『エンジニア×東京』ではなく、『エンジニア×データ分析×東京』といった具合に、自身のスキルや志望により近い求人情報にたどり着こうとする傾向があります。従来の仕事探しでは、求人媒体を閲覧する方法が主流でしたが、今は検索エンジンを利用し、より自分の希望に合った情報を探すようになった。もっといえば、普通の検索エンジンで何かを検索するように、求人検索エンジンを気軽に利用するようになっているのです」
それは、今の求職者が自分なりのロジックを重視するようになったからだと服部氏は言う。
「大きな会社で大きな仕事をしたいという昭和的な発想ではもうないのです。第一志望がNPO、第二志望で人材業界、第三志望にIT業界と一見脈絡がなくても、本人の中では一貫したロジックがあるのです。しかし、そうした価値観の変化は私たちには見えにくい。だからこそ、求職者のニーズや思いに企業側がきちんと耳を傾ける必要があるのです。
さらに、かつての求職者は社会が規定した業界の『カテゴリー』に沿って仕事を探していましたが、現在ではそのカテゴリーに当てはめるのではなく、多くの求職者は自分の言葉で仕事を探す『フリーワード検索』を行っている傾向が見えます」
高橋氏も積極的な情報収集意欲のある求職者に対して、企業側が「情報を見つけてもらう」という視点を強く持つことが必要だという。
「そのために大事なことは、求人情報の一つひとつの文章を精緻化することです。どのような人が欲しいのか。その求人要件を明確化し“ジョブディスクリプション”として提示する必要があります。海外でジョブディスクリプションといえば、求職者との契約書だといわれるくらい重要なもの。このジョブディスクリプションを基に検索エンジンのフリーワードに引っ掛かることで、マッチングが成立するという流れを生んでいくべきなのです」
また、自分なりのキャリアのストーリーを思い描いている求職者に対し、企業側はどのようなキャリアを提供できるのか。そのストーリーをイメージできるような情報提供をすることも大事だという。高橋氏が続ける。
「この会社で将来どのように働いているか、どのように社会に貢献できるか、自分のキャリアの“ストーリー”をイメージできる。そうした情報を私たちは“シェアードバリュー(価値共有)コンテンツ”と呼んでいます。いわば、共感を呼び、未来の自分を想像できる情報です。求職者が検索エンジンで採用企業のサイトにたどり着いたときに、企業理念や社風といった魅力を紹介したシェアードバリューコンテンツがあれば、理解度や応募動機をさらに高めることができるのです」