なぜ「質の高い人材」を獲得できないのか 採用に強いといわれる企業はここが違う
企業は今、求職者の価値観の変化に対応できているか?
人材獲得競争が加速し、求職者優位の時代といわれる今、企業の論理だけで採用活動を行うことは、ほとんど不可能になっている。なぜそのような状況になってしまったのか。その理由について、まず神戸大学の服部泰宏氏が次のように語る。
「いちばん大きな変化は、求職者の意識に変化が生じていることです。これまで求職者は会社を選ぶとき、給与や勤務地などわかりやすい基準で判断していました。しかし、今はもっと本質的な仕事の価値や自分のライフスタイルに合った仕事を求めるようになっています。その意味で、求職者の中では今、大きな地殻変動が起きているといえるでしょう。ただ、こうした“意識のインフラ”の変化に対応できている企業は非常に少ないのが現状です」
一方、Indeed Japan の高橋信太郎氏も同様に求職者の価値観が急速に多様化しているうえ、企業が採用したい人材像の定義を明確に行えていないという背景があるという。
「自分の経験やスキルを生かして転職したいという求職者に対応するためには、まず企業側が求める人材像をきちんと定義してさまざまな情報を発信していく必要があります。特に中途採用の場合は、求める経験やスキルを具体的に語らなければ、質の高い人材と出会うことは難しくなります。企業の情報発信が十分でないと、採用市場における求職者は自分の求める仕事を見つけにくくなり、結果的に市場の流動性も高まりません。求職者が、現在の仕事・企業に不満だから転職するのではなく、自分の能力を生かしたいから転職したい、というマインドになるには企業側の情報発信が不可欠です」
では、求職者には具体的にどのような変化が起きているのであろうか。服部氏が言う。
「たとえば、会社に入ったばかりの新卒でも、そこで一生過ごそうと考える人は今ほとんどいません。若い世代は、それだけ組織に対して絶対的な信頼感を抱いていないのです。中には、就職直後の5月から転職サイトを見始める人もいるほどです。ただ、それは会社に不満があるわけではない。自分の市場価値について把握するためなのです。かつては会社組織の中で、自分の価値を上げるのが当然でしたが、今は大きな人材市場の中に自分の価値を求めるようになっているのです」
高橋氏も、優秀な学生ほどNPOや国連など社会貢献的な仕事を志望していることに、価値観の大きな変化を感じるという。