立命館が担うスポーツビジネス「変化の3年」 ゴールデン・スポーツイヤーズが来年始まる

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立命館大学 イノベーション・アーキテクト養成プログラム副総括責任者
経営学部教授
善本哲夫

長積氏と同じくコーディネーターを務める同大学経営学部教授の善本哲夫氏は、調子は良いが、踊り場的な状況だと感じるタイミングだからこそ、慎重に、だが大胆に次の一手を打つべきだと訴える。

「社内・組織内を見渡せば、時代性を読み解き、何らかのアクションを起こしたくてウズウズしている人材が少なからずいるはずです。しかし、なかなか自分の仕事場にいては踏み出すきっかけが得られません。昨今のスポーツへの関心の高さや期待は、こうした人材のポテンシャルを触発し、その発想の自由度、行動の柔軟性を高める人材育成教材になり得ると思います。私たちコーディネーターはスポーツ業界のみならず、多分野、異分野からの挑戦に向けた気概や熱量を受け止め、新たなビジネス・産業フロンティアの創出に結びつける土壌を作りたいとの想いから、今回の『フロンティアメイカー育成講座』を立ち上げました」

「フロンティア創造回路」を構築する「守破離」

異分野融合的な発想から新たな領域開拓にチャレンジする。講座では、この思考回路を「フロンティア創造回路」と位置づける。スポーツを新たなステージへと導くことをターゲットにカリキュラムが組まれている講座で、それらをインプットに受講者は各自の「フロンティア創造回路」を形作り、既存のスポーツを超える「スポーツ超創」を目指していく――。その道筋として、この講座は「守破離(しゅはり)」の思想に目を向ける。

「守破離」とは、武道や茶道などの修業段階を示した日本古来の考え方。基本を学び(守)、自分なりのアレンジを加え(破)、新たな流派を創る(離)というプロセスを繰り返していくことで、道を極めていく。いわばつねに「基本の棚卸し」をすることで、スポーツビジネスの創造だけでなく、受講生のビジネスフィールドに新たな「血」を取り込むという狙いだ。その結果、スポーツ市場のみならず日本経済を活性化することにもつながるといえよう。

その好サイクルを生み出すため、「フロンティアメイカー育成講座」では講師も厳選。「既成概念から離れて新たなチャレンジをしている企業のキーパーソンを集めました」と前出の長積氏が胸を張るだけあり、強力なメンバーが顔をそろえる。

プロバスケットボールリーグ、Bリーグ発足から2年で集客を2倍にした千葉ジェッツふなばし、データの解析・配信でスポーツの新しい楽しみ方を開拓したデータスタジアムなど、そうそうたる企業のキーパーソンが講師を務める。

とりわけ注目したいのは、かつては赤字続きで低迷しながら、現在はスポーツメーカーとして世界売上高の3位争いをするアシックスだ。「オニツカタイガー」をスポーツファッションブランドとして復活させるなど、アスリート以外の一般ユーザーを取り込むことに成功している。復活劇の裏には、上質な製品を生み出すだけではなく、「フロンティア」を切り拓く戦略があった。

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