
小売業世界最大手の米ウォルマートが日本のスーパー大手、西友を売却する方針を決めた――。そんな報道が2018年7月になされた。その後、
売却報道は、事実無根
―― 米ウォルマートが西友の売却を決めたという報道があり、消費者やステークホルダーが注目しています。実際のところ、売却はあるのでしょうか。
スレープ まず、このニュースは事実と異なるということを申し上げたい。報道が出て以降、米国のウォルマートともやりとりをして、ただちに「西友を売却するという決定はない。また、それに関連した第三者との検討も一切行っていない」というメッセージを出しました。
ミッチェル・スレープ
1995年にウォルマート入社。アルゼンチン、韓国、メキシコ、インドへ赴任しながら、国際部門での不動産・建築関係、M&A、業態開発および店舗運営など数々の要職を歴任。15年8月に合同会社西友の最高執行責任者(COO)に着任、18年2月より現職
私は1995年にウォルマートに入社しましたが、このような強い内容のメッセージを会社が出したことは記憶にありません。つまり、このメッセージはトップマネジメントも含め、ウォルマートがこれまで同様に日本でビジネスを続けていくという強いコミットメントです。
実際に、長期的に日本での事業を確立していくために、さまざまな取り組みを進めています。たとえば、既存店舗の改装・改築にしっかりと投資をしています。2018年度には全部で30店舗ほどの改装を行いますし、来年度も40店舗から50店舗の改装を予定しています。また、ネットスーパー事業にも大きな投資をしています。18年8月には、楽天と共同でネットスーパー専用サイト「楽天西友ネットスーパー」もスタートさせました。もし、売却をするのであれば、このような長期的な提携は行いません。
―― 一方で、2002年の包括的業務提携から16年たちますが、ウォルマート流の日本市場戦略は成功していない、という見方も根強くあります。
スレープ それは誤解です。ウォルマートは、成功していると認識しています。西友との提携はある意味で「旅」のようなものです。西友は長い歴史のある会社ですが、そのビジネスモデルやカルチャーは、ウォルマートと非常に響き合う部分が大きいと感じています。お客様に対する誠意、地域社会との接点、あるいは社員に対するかかわり方などには多くの共通点があります。
一方で業務提携からの16年間で、財務基盤を強化し、お客様に喜んでいただくための改革も進めてきました。一般消費者の皆様から「お墨付き」をいただいた商品だけを発売するプライベートブランド「みなさまのお墨付き」などもその一つです。また、前述した「楽天西友ネットスーパー」の前身である「SEIYU ドットコム」は、「食品・日用品がいつでも安い」と多くのお客様に評価いただきました。
このほかにも、数百にも上る改革・改善を進めてきました。その結果、収益性もさらに高まっています。そして、そこで生まれた利益を価格に反映させてお客様に還元し、それがさらに売り上げを生むという好循環になっています。おかげさまで毎年プラス成長を続けています。

―― 日本でのビジネスをさらに成長させるために、具体的にどのような戦略をお考えでしょうか。
スレープ キーワードとして「鮮度」「価格」「利便性」の3つを挙げることができます。9月27日にはさいたま市の東大宮にこの3つのキーワードを具現化させた店舗をリニューアルオープンしました。「鮮度」では、地場の契約農家からの商品を拡大するなど、鮮度・品質を重視されるお客様のニーズに応える新しい売り場が生まれました。また、総菜売り場でも「できたて感」にこだわった新商品を投入します。
今、西友では『信頼を勝ち取るために、どこにも負けない価格と確かな品質で、毎日必要な商品を届ける・店舗でも、そしてネットでも』というお客様へのお約束を掲げていますが、このお約束を実現させるための最新モデルが東大宮店です。ここで得た知見を、今後の改装店舗にも生かしていく予定です。
また、他にもお客様から高い評価をいただいているカテゴリーとして畜産商品があります。中でもアメリカ産アンガスビーフは2016年の発売開始以来、ヒット商品となっています。この勢いをさらに加速させるために、10月4日からは日本では初となるトニーローマ(バーベキューリブで有名な米のレストラン)との提携により、ご家庭で簡単にレストランの味を楽しんでいただける新商品の販売を開始します。トニーローマのオリジナルバーベキューリブなどのポーク4アイテム、シーフード2アイテム、ソース3アイテムを、国内では西友が2年間の独占契約で販売します。これも、ウォルマートのグローバルパートナーシップによるものです。
トニーローマの味を日本で初めてご家庭でもお楽しみいただけるという点で、今までになかった新しい体験、新しい商品を提供することができることを嬉しく思っています。今回の商品には大いに期待をしています。
―― 小売りという業界においては、Eコマース市場が年々伸長し、食品にもその影響は及んでいます。日本でのEコマース市場に対するスタンス、今後の展開をどのようにお考えですか。
スレープ 食品・日用品をしっかりとお客様のご自宅までお届けするというのが私たちのコミットメントです。2000年に1店舗から始めたこのサービスは、現在126店舗まで広がっており、年間で20%成長しているビジネスです。今回、楽天と提携することで、もう一段高いレベルで付加価値の高いサービスを提供することができるようになります。
今回の提携に合わせて、千葉県柏市にある商品配送センターについてもさらに機能を強化すべく投資を行いました。ネットスーパー事業には未開拓のお客様、ニーズがたくさん眠っています。しっかりとサービスを拡大して適切にネットスーパーの魅力をアピールしていけば、新たなお客様にご利用いただける余地も大きいと考えています。また、今後は配送拠点の数も増やし事業を拡大していきます。
ネットスーパーは、将来にわたり大きな成長が期待できる分野です。私たちの強みである「食品・日用品がいつでも安い」を実現すれば、店舗に加えて、ネットスーパーでもマーケットのリーダーになれると自信を持っています。

世界各地で蓄積したノウハウを日本に
―― グローバルで見た時に、ウォルマートは日本市場をどのようにとらえているのでしょうか。
スレープ これだけのマーケットの規模があり、まだ成長の可能性が高いという意味でも非常に重要ですが、さらに日本国内だけではなく、アジア各国に対しても、日本のマーケットの影響というのは大きいと考えています。
私たちは、越境ECビジネスにも取り組んでおり、現在、日本の商品を中国に輸出しています。日本の商品は品質がよく、世界の各地にファンが多いので、今後、ウォルマートの他国において、新たなビジネスの柱になると考えています。
一方で、ウォルマートが世界のマーケットで培ったノウハウを日本に導入するという取り組みも進めています。たとえば、利便性の高いテクノロジーもその一つです。先ほどご紹介した東大宮店では、西友初となるスマートフォン専用アプリを利用したレジ精算システム「スマホ de レジ」を本格導入します。これは、ウォルマートが米国で導入している技術を活用したもので、お客様自身がスマートフォンを使ってお買い物商品をスキャンし、専用レジで精算できるというものです。レジ回りでは、入店から買い終わりまでの時間を短縮できるよう、お客様の買いやすい導線を工夫しているほか、セルフレジ「すぐレジ」の導入なども進めています。
このほか、物流システム、在庫管理、空調管理など、お客様からは見えない部分にもウォルマートが世界各地で蓄積したノウハウを導入しています。これらにより削減できたコストを価格の引き下げという形で還元するのが私たちのビジネスモデルです。
―― それらのノウハウを生かして、今後も日本でのビジネスを継続していくと。
スレープ そのとおりです。そのために投資を続けていきます。長期的に日本において事業を進めていく、邁進していくという姿勢に変わりはありません。お客様、お取引先様、それから社員に対してもしっかりとメッセージを発信し続けていきます。これからも長年にわたって日本市場にコミットし続けていくことに何ら変わりはありません。