─ 結びに ─
困難なこれからの10年、今がまさに岐路
大崎明子(東洋経済新報社 編集局 ニュース編集部 部長)
舵取りが難しい金融政策
金融緩和政策を軟着陸させることも簡単ではない。リーマンショックの直後のような信用不安から流動性が枯渇する状態では、資金ショートが連鎖し、デフレスパイラルに陥る可能性があるから、金融政策によって食い止めることは必要である。問題は金融政策もまた、市場関係者の求めに応じて長期化し、やめられなくなることだ。だからバブルとその崩壊が繰り返される。
FRBも日銀も現在行われている大規模な国債(米国は住宅ローン担保証券を含む)買い取りによる量的緩和策でバランスシートが膨らんでいる。その正常化の過程で、急激な引き締め、長期金利の急上昇を避けるために、自然償還に任せて徐々に縮小する方法を取ることが想定されている。だが、そうすると日米とも、緩和前の通貨供給量の伸びの軌道に戻すには2020年過ぎになると試算されている。
潤沢な準備預金が積まれたままで、景気が好転し金利が上昇を始めれば、いわゆる「乾いた薪」となり、インフレが進む懸念がある。大きな債務を抱えたままで金利が上昇すれば財政再建にはますます行き詰まる。インフレになれば税収が増えるが、債務の対GDP比が100%を超えていれば、負債の拡大のほうが大きくなるからだ。
そもそも企業の資金が余剰であり、銀行貸し出しが伸びていないなかで金利が低いことは、民間企業の投資を刺激する効果を生んでおらず、政府部門を支えることにしか貢献していない。すでに金融政策は国債管理政策になってしまっている。それが日本の潜在成長率をさらに押し下げている可能性のほうが高い。