健全かつ持続可能な企業経営の本質ESG 「社会課題の解決」に注がれる、熱い視線
環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の三つの観点に配慮して持続可能な事業活動を行う企業に投資する「ESG投資」が定着し始め、企業側の「ESG経営」の取り組みも本格化している。東京・千代田区で開かれた「決定版ESG」には、約300人が参加。オープニングで東洋経済ESGオンラインを運営する東洋経済新報社の岸本吉浩・CSR企業総覧編集長は「ESGの発展には、非財務情報の収集・評価、評価機関側と企業との対話の拡大が重要」と述べ、「講演をヒントに、それぞれの企業に合った取り組みを進めていただければ」とあいさつした。
主催:東洋経済新報社
協賛:コムジェスト・アセットマネジメント
基調講演
ESG投資の本質は何か
フューチャー・テーカーからフューチャー・メーカーへ
高崎経済大の水口剛氏は、地球温暖化や、経済格差拡大、金融の短期主義化といった問題を解決できない資本主義システムに対して「不信感がこのまま高まれば、経済基盤そのものが失われかねないという危機感がESG投資の背景にある」と説明した。ユニバーサルオーナー(公的年金基金など巨大投資家)のESG投資の考え方には、ESGリスクを避けることで収益追求を図るフューチャー・テーカーの立場と、社会の共有財産を守る責任を果たすためのルールを市場に組み込み、目指すべき社会を作ろうとするフューチャー・メーカーの立場の二通りがあると指摘。さらに環境や社会の要素が投資意思決定に重要と考える個人投資家の選好も反映させようとするEUの動きにも触れて「資本主義が存続するために、市場の問題解決能力が問われている」と語った。
問題提起
「持続可能な」ESG戦略
EとSを支えるGをどう構築するか?
トーマツの達脇恵子氏は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)、地球温暖化対策のパリ協定をめぐって、さまざまなイニシアティブが活発化している現状に言及。「企業は、ESGの視点を経営に組み込む必要がある」と話した。取締役会での社会視点を持つ社外取締役の活用や、恒常的なサステナビリティの議論、株主・ステークホルダーに活動を開示してエンゲージメントを進めることで社会の声を反映。マテリアリティ(重要な社会課題)を本業と別物にしないため、中期経営計画策定プロセスにマテリアリティ分析を組み入れたり、ESGリスクを見える化したり経営層にサステナビリティを認識させるマネジメントを提案。リスクシナリオ分析では「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)のリスクモデルが、気候変動に限らずほかの長期的社会課題にも応用できる」と述べた。