ASEAN CONFERENCE 2018 変化する「ヒト・モノ・カネ」の流れ
特別講演II
ASEAN市場の魅力とイオンモールの事業戦略
ベトナム、カンボジア、インドネシアの3カ国に計8店舗を展開するイオンモールの玉井貢氏は、経済成長に伴って消費が伸びるASEAN地域の魅力を説明。中でも、出店している3カ国は、近年、小売市場で高い伸びを見込めることを示した。同社は、インドネシアの現地有力企業との合弁や、ベトナムの市行政当局との提携によって、政府・行政とパイプを築き、許認可取得を円滑に進めるなどリスクを抑えて展開を加速。
2014年にプノンペンに進出したカンボジアでは、まだ平均所得水準が低いという懸念にもかかわらず、昨年の来店客数が、同国人口1500万人を上回る成功を収め、2018年は2号店もオープンした。
開発が進むエリアに複数出店して他社に対して優位な地位を築くのが基本戦略で「その国でナンバーワンになれるかどうか」を進出判断のポイントに挙げた。家族で楽しめる空間というリアル店舗の強みを増すため、インドネシアでは観覧車などエンターテインメントに注力。清潔なトイレ、ベビールームなど施設面も充実する。ただ「ハード面はすぐに模倣されるので、ソフト面での差別化が重要」として、従業員教育による接遇マナー向上に努めた。「営業、ブランド力を高め、ASEAN地域ナンバーワンの商業デベロッパーを目指したい」と意気込んだ。
特別講演III
デンカのASEANにおけるバリューアップ戦略
~Denka Value-Upの実現に向けたグローバルチャレンジ
機能樹脂から医薬品まで、5部門にわたる幅広い製品群を手がける中堅化学メーカー、デンカの鈴木正治氏は、ASEAN地域での事業展開について話した。同社は、1980年、シンガポールにグループ会社を設立。現在、ベトナム、マレーシア、インドネシアを含むASEAN地域は7工場、9事業所、1研究所を展開し、グループ売り上げの20%を占めている。
同地域は、機能樹脂部門の最大生産拠点であり、特殊混和材部門は経済成長が著しいASEAN諸国のインフラ開発需要取り込みを狙う。導電材など電子・先端製品と、ビニールテープなど生活・環境製品部門は、国内に続く第2の生産拠点として位置づけるとともに、2017年、シンガポールに研究所を開いた医療部門は、地球温暖化によって増加が懸念される熱帯感染症のワクチンや診断薬の研究開発拠点となる。
さらに、国家戦略としてデジタル化に取り組むシンガポールでは、政府の支援も受け、IoTを活用したシンガポール工場のスマートファクトリー化を推進。「労働生産性2倍を目標に生産プロセス革新のモデル工場にしたい」と話す。また、グローバル人材の獲得、育成の場としてもASEAN地域に注目。現中期経営計画の目標年、2022年に向けて「世界に存在感を示すスペシャリティーの融合体となる」と話した。
特別講演Ⅳ
ASEANにおけるスポーツビジネスの展望と
アシックスの取り組み
アシックスのポール・マイルズ氏は、ASEANスポーツ市場について「母数はまだ少ないが、急伸しています」と話した。背景には、モータリゼーションの始まりの目安とされる一人当たりGDP4000ドルを超え、衣食住以外の消費の活発化があるとして「今後のポテンシャルは高いと感じます」と述べた。
ASEAN諸国では、スポーツへの関心は高いが、主に観戦にとどまる、と分析。同社では、自ら動いてもらうため、健康意識向上、現地密着、ソーシャルメディア活用の3本柱でマーケティング戦略を展開する。
具体的には、健康増進に期待する各国政府の支援も受け、さまざまなスポーツイベントを開催。
ASEAN諸国では、家族や友人との絆を大切にする傾向が強いことから、駅伝形式にしたランニング大会「アシックスリレー」を開催するなど、地域文化に合わせた地元密着型スポーツイベントを実施している。また、ASEANで利用者が急増しているソーシャルメディアによるマーケティングにも注力。ソーシャルメディアに強い影響力を持つインフルエンサーも活用する。日本のアシックス系列店では、アジアからの訪日観光客の来店も増えているとして、現地のマーケティング活動が、日本のインバウンド需要拡大につながることも期待した。