ASEAN CONFERENCE 2018 変化する「ヒト・モノ・カネ」の流れ
特別講演I
ASEAN事業展開(生産・販売)、課題と対応
総合ベアリングメーカー、NTNの鵜飼英一氏は、ASEAN地域に展開する販売・製造会社を担当した経験を語った。シンガポール法人の立て直しのために現地トップを交代させた経験に触れて「マネジメントの現地化は大切だが、現地に適切な人材が見当たらない場合には、次善の策として、日本人トップの右腕に現地の優秀な実務人材を充てることも可能」と述べた。
また、労働組合が活発なタイの製造会社では、近隣企業を上回る賃上げ、人員過剰による生産性低下が目立ったことから、労使関係を正常化した経験に言及。「生産が滞った場合の対応も十分に整え、出向者、マネジメントが団結して断固とした姿勢で交渉に臨むことが大切」と話した。一方で「現地の文化・習慣の尊重が足りない面もあった」と反省。僧侶を招いて、その月に誕生日を迎える社員の「タンブン(徳を積むの意味)」を開催するなど、従業員満足度向上も図った。
為替リスク管理や関税負担など財務面では、柔軟な金融環境があるシンガポール法人を活用した。
2018年以降、ASEANの国家間では関税が撤廃されるが、新たな非関税障壁が設けられ、担当者によって税法の解釈にブレが大きいなどの課題も指摘。
それでも「困難の中にこそ、大きなチャンスがあると思います」とASEANでの事業に期待した。
リードスポンサーセッションII
ASEAN×リアルタイム経営管理の阻害要因と解決策
ASEAN地域でシステム導入に豊富な経験を持つ3氏が登壇。海外展開のカギとなるリアルタイム経営管理について、それを実現するシステムの観点からも討議した。
マイクロソフトの田村元氏は、以前は、PCやサーバーに散在するデータ(特にExcelなど)を、人手を介して集めていたため、真にリアルタイムの状況を見ることができなかったが、「今はクラウド上の基盤にデータを置くことで、リアルタイムのデータに手を伸ばせば届きます」と述べた。また、海外でシステム化を妨げる要因として、共通の言語基盤がないことを挙げて「現地の従業員には、現地語を使って入力してもらうことで詳細な情報を入力しやすくなり、今の技術ならそれを日本語に翻訳することもできます」と述べた。
日立ソリューションズ(タイ現地法人)の出木晶氏は、経営管理を「収益の管理・改善を目的として、今を知り、その先を予測して、次の手を考えて行動すること」と定義。現在や過去の在庫データを使って、在庫推移を予測すれば、機会損失を防ぐ管理が可能になるとして、将来予測にはデータの精度向上が重要と強調した。ASEANでの勤務経験から、現地従業員はまじめだが、退職リスクが比較的高く、引き継ぎもスムーズにいかないことが多いと指摘して「日々の業務を標準化し、できればシステム化することが大切です」と語った。
日立ソリューションズの池田健太郎氏は、グローバルパートナーとして販売するマイクロソフトのクラウド情報基盤「Dynamics」の提供をPR。「カスタマイズ、各国展開に対応できる経験豊富なエンジニアをそろえている」とアピールした。