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ASEAN CONFERENCE 2018 変化する「ヒト・モノ・カネ」の流れ

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  • セミナーレポート 制作:東洋経済企画広告制作チーム
経済共同体の発足、域内関税の撤廃を受け、事業拠点として、また消費市場としても、存在感を増すASEANでの事業展開について検討する「ASEAN CONFERENCE 2018」が東京・千代田区で開かれた。オープニングで、主催の東洋経済新報社、駒橋憲一社長は、参加者の9割以上がすでにASEAN地域に進出、または取引をしているというアンケート結果を示し「ASEANでの事業展開は、日本企業に不可欠になっていることがうかがえます」と指摘。「先進企業の戦略から課題解決のヒントを見つけ、ASEANビジネスの飛躍につなげていただければ」とあいさつした。
主催:東洋経済新報社
リードスポンサー:KPMGジャパン  日本マイクロソフト  日立ソリューションズ
展示スポンサー:S&P Global Market Intelligence

基調講演
ASEAN共同体の最新動向
-AEC発足3年目の成果と日本企業の事業環境

木村 福成氏/慶應義塾大学 経済学部教授 東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA) チーフエコノミスト

慶應義塾大学の木村福成氏は、ICTの進化に伴う、ASEAN経済政策の変化の方向性について考察。19世紀の国際貿易の隆盛による産業単位の国際分業「第1のアンバンドリング(UB)」を経て、今の世界経済は、生産工程単位で国際分業する「第2のUB」にあり、今後は、コミュニケーションテクノロジー(CT)の発達で、個人レベルの国際分業も可能になる「第3のUBが起きる」との認識を示した。

第3のUBでは、CTが地理的距離を克服し、インターネットプラットフォームが個人間のマッチングを促進。言語の壁を翻訳ソフトなどによって越えれば、より賃金の安い国で、同程度の能力を持つ労働者を雇うことができ、国境を越えたサービスのアウトソーシングが盛んになる可能性がある。

ASEANは、これまで、第2UBの国際分業ネットワークによる発展を目指し、自由貿易協定や投資自由化を進めてきた。木村氏は、この方向性について「まだやれる余地は大きい」としながらも、今後、ASEAN各国政府は、第3のUBを経済開発戦略に組み入れ、BtoC・CtoCサービスにおける消費者保護、優秀なイノベーション人材を集めるための教育、医療など都市環境整備を重視するようになると予想。「日本企業は、こうした変化を認識し、彼らの新たな挑戦に目配りすべきです」と呼びかけた。

リードスポンサーセッションI
ASEAN M&Aを通じて収益を創出するには

中尾 哲也氏/KPMG FAS
執行役員パートナー

M&A関連のアドバイザリーを提供するKPMG FASの中尾哲也氏は、この20年の日本企業によるASEAN企業買収の平均額は、1件当たり100億円未満で、欧米企業の3分の1強にとどまり、「投資規模が比較的小さい」という特徴を指摘。ASEANでのM&Aは、限定的な開示資料、脆弱なコンプライアンスなどの課題も多く、「投資規模は小さくても、リスクは大きいので、買収後は、高リターンを得ることが重要です」と述べた。

そのためには、買い手が経営資源を投入し、買収した企業を大きく成長させることが不可欠で「買収後の統合(PMI)段階の投資も買収の勘定に含めて、買収後の戦略をよく練ることが大切です」と強調。PDCAサイクルを回し、業績をモニタリングしながら計画を進めることを勧めた。一方、買収した企業の幹部、社員から期待する反応を引き出せない可能性にも言及。優れた戦略を提示し、合理的な経営・オペレーションを実践すると同時に、親会社の日本企業が、現地の政府や、金融機関、顧客らに主体的にかかわり、コミットメントを示すことで、ビジネス上の信頼関係を構築するように促した。中尾氏は「ASEAN企業の二代目、三代目は欧米で教育を受けていることが多く、欧米型経営に通じた経営者も増えています。目の肥えた相手にはグローバルに通用する戦略の提示が必要です」と訴えた。

特別講演I
ASEAN事業展開(生産・販売)、課題と対応

鵜飼 英一氏/NTN 取締役 アフターマーケット事業本部 担当(兼)韓国NTN販売 担当(兼)アセアン・大洋州、インド・西アジア各地区 担当

総合ベアリングメーカー、NTNの鵜飼英一氏は、ASEAN地域に展開する販売・製造会社を担当した経験を語った。シンガポール法人の立て直しのために現地トップを交代させた経験に触れて「マネジメントの現地化は大切だが、現地に適切な人材が見当たらない場合には、次善の策として、日本人トップの右腕に現地の優秀な実務人材を充てることも可能」と述べた。

また、労働組合が活発なタイの製造会社では、近隣企業を上回る賃上げ、人員過剰による生産性低下が目立ったことから、労使関係を正常化した経験に言及。「生産が滞った場合の対応も十分に整え、出向者、マネジメントが団結して断固とした姿勢で交渉に臨むことが大切」と話した。一方で「現地の文化・習慣の尊重が足りない面もあった」と反省。僧侶を招いて、その月に誕生日を迎える社員の「タンブン(徳を積むの意味)」を開催するなど、従業員満足度向上も図った。

為替リスク管理や関税負担など財務面では、柔軟な金融環境があるシンガポール法人を活用した。

2018年以降、ASEANの国家間では関税が撤廃されるが、新たな非関税障壁が設けられ、担当者によって税法の解釈にブレが大きいなどの課題も指摘。

それでも「困難の中にこそ、大きなチャンスがあると思います」とASEANでの事業に期待した。

リードスポンサーセッションII
ASEAN×リアルタイム経営管理の阻害要因と解決策

ASEAN地域でシステム導入に豊富な経験を持つ3氏が登壇。海外展開のカギとなるリアルタイム経営管理について、それを実現するシステムの観点からも討議した。

田村 元氏/日本マイクロソフト Dynamicsビジネスアプリケーション統括本部 業務執行役員統括本部長

マイクロソフトの田村元氏は、以前は、PCやサーバーに散在するデータ(特にExcelなど)を、人手を介して集めていたため、真にリアルタイムの状況を見ることができなかったが、「今はクラウド上の基盤にデータを置くことで、リアルタイムのデータに手を伸ばせば届きます」と述べた。また、海外でシステム化を妨げる要因として、共通の言語基盤がないことを挙げて「現地の従業員には、現地語を使って入力してもらうことで詳細な情報を入力しやすくなり、今の技術ならそれを日本語に翻訳することもできます」と述べた。

出木 晶氏/
Hitachi Solutions(Thailand)
General Manager JOC Support Center

日立ソリューションズ(タイ現地法人)の出木晶氏は、経営管理を「収益の管理・改善を目的として、今を知り、その先を予測して、次の手を考えて行動すること」と定義。現在や過去の在庫データを使って、在庫推移を予測すれば、機会損失を防ぐ管理が可能になるとして、将来予測にはデータの精度向上が重要と強調した。ASEANでの勤務経験から、現地従業員はまじめだが、退職リスクが比較的高く、引き継ぎもスムーズにいかないことが多いと指摘して「日々の業務を標準化し、できればシステム化することが大切です」と語った。

池田 健太郎氏/日立ソリューションズ Microsoft & Dynamics営業部 部長代理

日立ソリューションズの池田健太郎氏は、グローバルパートナーとして販売するマイクロソフトのクラウド情報基盤「Dynamics」の提供をPR。「カスタマイズ、各国展開に対応できる経験豊富なエンジニアをそろえている」とアピールした。

特別講演II
ASEAN市場の魅力とイオンモールの事業戦略

玉井 貢氏/イオンモール 取締役 アセアン本部長

ベトナム、カンボジア、インドネシアの3カ国に計8店舗を展開するイオンモールの玉井貢氏は、経済成長に伴って消費が伸びるASEAN地域の魅力を説明。中でも、出店している3カ国は、近年、小売市場で高い伸びを見込めることを示した。同社は、インドネシアの現地有力企業との合弁や、ベトナムの市行政当局との提携によって、政府・行政とパイプを築き、許認可取得を円滑に進めるなどリスクを抑えて展開を加速。

2014年にプノンペンに進出したカンボジアでは、まだ平均所得水準が低いという懸念にもかかわらず、昨年の来店客数が、同国人口1500万人を上回る成功を収め、2018年は2号店もオープンした。

開発が進むエリアに複数出店して他社に対して優位な地位を築くのが基本戦略で「その国でナンバーワンになれるかどうか」を進出判断のポイントに挙げた。家族で楽しめる空間というリアル店舗の強みを増すため、インドネシアでは観覧車などエンターテインメントに注力。清潔なトイレ、ベビールームなど施設面も充実する。ただ「ハード面はすぐに模倣されるので、ソフト面での差別化が重要」として、従業員教育による接遇マナー向上に努めた。「営業、ブランド力を高め、ASEAN地域ナンバーワンの商業デベロッパーを目指したい」と意気込んだ。

特別講演III
デンカのASEANにおけるバリューアップ戦略
~Denka Value-Upの実現に向けたグローバルチャレンジ

鈴木 正治氏/デンカ 常務執行役員 IR室 CSR・広報室 担当
Automotive Materials & Solution開発推進室 担当
経営企画室長 Denka Value-Up推進室長

機能樹脂から医薬品まで、5部門にわたる幅広い製品群を手がける中堅化学メーカー、デンカの鈴木正治氏は、ASEAN地域での事業展開について話した。同社は、1980年、シンガポールにグループ会社を設立。現在、ベトナム、マレーシア、インドネシアを含むASEAN地域は7工場、9事業所、1研究所を展開し、グループ売り上げの20%を占めている。

同地域は、機能樹脂部門の最大生産拠点であり、特殊混和材部門は経済成長が著しいASEAN諸国のインフラ開発需要取り込みを狙う。導電材など電子・先端製品と、ビニールテープなど生活・環境製品部門は、国内に続く第2の生産拠点として位置づけるとともに、2017年、シンガポールに研究所を開いた医療部門は、地球温暖化によって増加が懸念される熱帯感染症のワクチンや診断薬の研究開発拠点となる。

さらに、国家戦略としてデジタル化に取り組むシンガポールでは、政府の支援も受け、IoTを活用したシンガポール工場のスマートファクトリー化を推進。「労働生産性2倍を目標に生産プロセス革新のモデル工場にしたい」と話す。また、グローバル人材の獲得、育成の場としてもASEAN地域に注目。現中期経営計画の目標年、2022年に向けて「世界に存在感を示すスペシャリティーの融合体となる」と話した。

特別講演Ⅳ
ASEANにおけるスポーツビジネスの展望と
アシックスの取り組み

​ポール・マイルズ氏/アシックス 執行役員 マーケティング統括部長

アシックスのポール・マイルズ氏は、ASEANスポーツ市場について「母数はまだ少ないが、急伸しています」と話した。背景には、モータリゼーションの始まりの目安とされる一人当たりGDP4000ドルを超え、衣食住以外の消費の活発化があるとして「今後のポテンシャルは高いと感じます」と述べた。

ASEAN諸国では、スポーツへの関心は高いが、主に観戦にとどまる、と分析。同社では、自ら動いてもらうため、健康意識向上、現地密着、ソーシャルメディア活用の3本柱でマーケティング戦略を展開する。

具体的には、健康増進に期待する各国政府の支援も受け、さまざまなスポーツイベントを開催。

ASEAN諸国では、家族や友人との絆を大切にする傾向が強いことから、駅伝形式にしたランニング大会「アシックスリレー」を開催するなど、地域文化に合わせた地元密着型スポーツイベントを実施している。また、ASEANで利用者が急増しているソーシャルメディアによるマーケティングにも注力。ソーシャルメディアに強い影響力を持つインフルエンサーも活用する。日本のアシックス系列店では、アジアからの訪日観光客の来店も増えているとして、現地のマーケティング活動が、日本のインバウンド需要拡大につながることも期待した。