
タキロンシーアイ誕生、存在感を際立たせた1年
国内需要が伸び悩み、グローバルな価格競争が熾烈を極める合成樹脂業界にあって、この1年、ひときわ大きな存在感を示したのが、プラスチック加工総合メーカーのタキロンシーアイ株式会社だ。
現在、住設建材、床材、建装資材などを扱う建築資材事業、農業資材、土木資材などの環境資材事業、半導体や液晶などの産業用途からカメラなど精密機器にまで用いられる高機能材事業、包装用熱収縮フィルム、チャックテープやチャック袋などの機能フィルム事業の4領域で事業を展開する。集合住宅の改修に使用される防滑性床材のシェアが60%を超えるほか、国内の農業用フィルム市場でトップシェアを誇るなど、合併によって同社の強みがより明確になった。
2017年度の連結売上高は約1500億円、営業利益は当初予想した70億円を大幅に上回る約83億円を達成。中でも半導体や液晶製造装置向け工業用プレートが大きく収益を拡大し、同社を牽引する事業の一つになっている。「合併による一過性の利益もありましたが、不稼働資産を整理するなど『負の遺産』を一掃しながらも大幅な増収になりました。予想以上に順調なスタートを切ることができたと思っています」と代表取締役社長の南谷陽介氏は手応えを口にした。
統合シナジーを発揮し国内生産・販売を強化
タキロンシーアイグループは統合に伴い中期経営計画「Good chemistry Good growth 2020」を策定し、2020年までの4カ年計画をスタートさせた。まず統合シナジーを最大限発揮するべく構造改革に取り組む。初年度は、床事業(旧タキロン)と建装資材事業(旧シーアイ化成)の販売部門の集約を実行した。「旧企業がそれぞれ築いてきた販売体制を統一し、製造から流通、お客様対応までバリューチェーン全体を担う体制を構築しました。商品そのものだけでなく、サービスも含めてトータルで高付加価値化することで、既存事業の競争力を強化します」と南谷氏は狙いを説明する。
今年度にもグループ会社の大日本プラスチックスと日本ポリエステルそれぞれの採光建材販売部門のタキロンシーアイへの集約を予定しており、各社が個別に行っていた営業活動を一本化することでお客様へのサービスレベルを上げ、より強固な販売体制を構築する。
また生産拠点の最適化も積極的に推進する。2019年度下期には完成を目指す東京第一工場を再開発し、大日本プラスチックスで取り扱う耐圧ポリエチレンリブ管(ハウエル管)の生産を移管する計画だ。ハウエル管は、高密度ポリエチレン樹脂製で独特の中空リブ構造により、軽量でありながら優れた強靱性、耐衝撃性、柔軟性を備えているのに加え、最大口径3mまで製造可能な導水管である。同社は、ハウエル管の品質に加えて緊急災害時に在庫分から即対応できたことが高く評価され、受注を伸ばしている。東京第一工場への移管が完了すれば、ハウエル管の一大生産拠点として大幅な増産を支えることになる。
海外展開を加速しグローバルに市場を拡大
構造改革によって国内事業を強化する一方で、海外展開も加速させている。世界最大の市場であるアメリカではシュリンクフィルムの拡販を進めている。高い技術で高品質のフィルムを安定して製造できることから、同社のシュリンクフィルムは飲料水のペットボトルのほか、多様なボトルの包装に用いられ、シェアを伸ばしている。

写真は飲料、食品、日用品のラベルとしての使用例。
(写真下)チャック袋
「国や地域によって、環境基準や包装に求める価値は異なります。それぞれのニーズに適した製品を提供することが海外展開の肝になります」と南谷氏。
先進国では特に環境意識の高まりからPETなどリサイクルが容易で環境負荷の低い素材の使用が求められる。そこでアメリカと南米のウルグアイ、そして日本の岡山県の3拠点に生産体制を整備。PET、塩化ビニル、ポリスチレンなど材質ごとに生産を集約し、合理化と増産を可能にした。
一方、上海と日本の平塚工場をフル稼働して製造しているのが、チャックテープ、チャック袋だ。医薬品や菓子などの食品の包装のほか、大手衣料品メーカーのパッケージに用いられるなど、従来にはなかった価値が見いだされ、需要は右肩上がりに伸びている。
さらにヨーロッパ市場では家具用化粧材の拡販をもくろみ、イタリアの生産拠点で増産を計画している。「現在、欧州向け化粧材の約3割は日本で製造していますが、いずれはイタリア工場ですべて製造できるようにするつもりです。
現地のオペレーターに日本で研修を受けさせたり、日本人の指導員を派遣し、日本と同じ高い品質と生産効率をグローバルに実現することで、それを可能にします」という。
人づくり、組織づくりで成長軌道へ
積極的な事業展開を成功させるには、それを支える経営基盤の強化が欠かせない。「旧会社のいずれの出身かにかかわらず、全員で新しい企業文化を創っていく」として、同社は組織づくりにも力を注ぐ。工場の集約や移転に伴って配置転換を積極的に行い、社員の融合を図るのもその一つ。また部署を横断して社員が集まり、どのような企業をつくっていくかを話し合うなどコミュニケーションを活発化させている。「とりわけ必要だと感じるのは、成功体験の共有です」と南谷氏。「長く不況が続いた結果、社員の多くは新しいことに挑戦し、成功させた経験に乏しい。今後ビジネスチャンスを果敢につかみ取る上で、これまでの成功体験とノウハウが力になるはずです」と言う。
「今後、2020年に向けたインフラ建設の需要増加など、建築土木分野の投資は大きくなることが予測されます。それに向け、国内事業も拡大の手を緩めるつもりはありません」と前を見据えた南谷氏。次期へ向け、新製品の開発を成長戦略に位置づけることに加え、M&Aによる新規事業の開拓も積極的に進める。また収益の高い成長事業だけでなく、成熟領域においても厳しく収益向上を追求する。「視点を変えれば、新たなサービスやこれまでにない商品を創出することは可能です」として、既存商品や当たり前の品質の中に新たな価値を見いだし、「コモディティをスペシャルに」することで、成長軌道を描こうとしている。
「真価が問われる1年になる」と意気込むトップの熱いリーダーシップが、タキロンシーアイの勢いを加速させている。
業界のリーディングカンパニーへ
―2017年、タキロンシーアイの設立を機に策定した中期経営計画についてお聞かせください。
南谷 陽介
南谷 4カ年にわたる中期経営計画「Good chemistry Good growth 2020」で、2020年度の売上高1800億円を目標に定めました。その達成に向けて、成熟領域、成長領域、新規領域それぞれで売り上げ増加に取り組んでいます。市場規模の大幅な拡大を見込むのが難しい成熟領域では、社内の構造改革と統合シナジーによって製販を効率化し、競争力向上を図ります。成長領域には特に経営資源を積極的に投入し、海外を含めて事業の拡大、新製品開発に挑み、増産を強化しています。さらに新規領域においてはM&Aにも積極的に取り組みます。業界の枠を超えて新規事業を開拓し、将来当社の柱になる事業を創出・育成したいと考えています。
―「たゆまぬ挑戦と実行を通じ、業界のリーディングカンパニーとして社会に貢献する」ことを経営ビジョンに掲げられています。そこに込められた思いをお聞かせください。
南谷 培ってきた歴史も企業文化も異なる2社が一つになってタキロンシーアイとして新たなスタートを切るにあたり、全員が同じ方向を向くための旗印として、経営ビジョンを掲げました。合併によって、売上高およそ1500億円、グループ全体で3500名を超える従業員を擁する日本屈指のプラスチック加工メーカーになりました。しかし企業規模を大きくすることが最終目標ではありません。各事業領域でお客様に新しい価値を提供し、圧倒的な存在感のある商品を生み出すモノづくり企業になることを目指しています。
―2019年に旧企業の創業から数えて100周年を迎えます。タキロンシーアイとして次の100年に向けた展望をお聞かせください。
南谷 私は常々仕事においては「想像力」が必要だと説いています。10年後、20年後、さらには100年後、タキロンシーアイがどのような会社になっているか、なっているべきか、想像力を働かせて考えることが重要です。つねにあるべき姿を想像し、そのための準備を怠らずに進むことで、成長の芽となるチャンスが現れた時、それを見逃さずに確実につかむことができると考えるからです。従業員一人ひとりが常日頃から想像力を駆使して新たな価値を創出するようなビジネスを探し続けるとともに、経営陣も想像力を豊かに発揮して目指すべき未来を切り開いていきます。
